以前『古事記』の授業のなかで、イザナギが黄泉の国の穢れを禊したことで、アマテラスとツクヨミ、スサノオが誕生したという話をした。

誕生後、物語はアマテラスやスサノオの話が中心となって展開される。


「もう一人のツクヨミは何してるんだろう?」

学生の素朴な疑問だった。


この素朴な疑問点は実は、河合隼雄が『中空構造日本の深層の中で議論したことであった。




河合先生は、心理療法を学ぶべく海外に留学したが、そこで日本人と西洋人の根本的な心のありようの違いを実感する。

つまり西洋でうまくいくはずの心理療法の技術が、日本人にうまく適応することができない場面になんども出くわすのである。

そこで、日本人の心の深層を明らかにする必要性を痛感し、日本神話の分析を行うようになったという。


先生は、ツクヨミやアメノミナカヌシといった、中心にいるべき存在が全く触れられることなく、無為に扱われていることに着目。

日本の本質的な構造とは、中心がカラッポなことにあるんだ!という主張をしたのである。


確かに日本では、中心にいくと何もないカラッポ空間になっていることが多いかもしれない。

神社についても、中心はカラッポである。

そんな何もないところから、神はどこからともなくまれびとのように出現するのだ。


またロラン・バルトも、東京の中心に存在する皇居を見て、その空虚性を指摘している。(ロラン・バルト『表徴の帝国


どうやら日本の深層構造はカラッポな中心性にあるといえば、そんな気がするのである。


日本という土地で生まれ育った僕にはなかなか気づかない、中空性のような独特な構造はまだあるかもしれない。

そのへん、タイの若い学生が素朴な疑問として見出してほしいものだ。

そして将来的には、ロラン・バルトのように鋭い日本論を書くタイ人の学生が現れたら、嬉しい限りである。


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去年、ツマゴマの知り合いの方にお祝いとして、ホテルの宿泊ギフトカードをいただいた。

有効期限は1年だったので、そろそろ危ない。

そこで、今週の中間試験期間中しかチャンスがないと判断、予約を入れた。


ギフトカードの系列ホテルは全国展開していて、プーケットのなんて、まさに楽園のようである。

しかし、仕事や時間の関係上、チェンマイ市内のホテルにした。

ザ・タイって感じの森に囲まれた空間だ。

なので、「まあ、ゆっくりしに行こう」「美味しい朝ごはんを食べよう」って感じだ。

そして何より「風呂に入ろう」という思いでの予約である。


ギフトカードでの宿泊は、専用デスクからの予約となる。

agodaやbooking.comといったところからの予約はできない。

そして、それらでの予約に比べて、20パーセントくらい料金が増すのだ。


しかも、割と手続きが必要で、メールや電話で何度やりとりしたことか。


でも、なんとか予約を終えた。

ギフトカード分よりも少々お金がかかってしまい、足さねばならないが、いいホテルに宿泊して、体を癒そうと思う。


ホテル宿泊前に中間テストを作成しないとな。


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髪の毛が、伸びてきた。

久々に前髪が目にかかりそうだ。

僕は基本的にワックスをつけて、髪の毛をあげているが、風呂上がりはおりている。

それがだいぶ長い。

かつて若かりし頃ロン毛の頃もあった。

が、今は鬱陶しくてできない。

若かったな。


ところで、前髪を下ろすと、ふと思い出すシーンがある。

それは、ロッブリー時代に仲の良かった学生が、夜の道で笑っていた顔と周りの風景だ。


そいつは、突然夜遅くに、

「先生、今から飲みません?」

とメールを送ってきた。


もうとっくにシャワーを浴びて、そろそろ寝ようかとくつろいでた時だったと思う。

でも、飲む場所は近所だったので、仕方なく行くことにした。

そいつは確かバイクで迎えにきてくれたと思う。


会うなり、あいつは笑った。

「先生、前髪下ろしてると、なんだか可愛いっすね」

そう言った。


身長が2m近くあったあいつは、一見するとイカついが、笑顔が優しい男だった。

「うるせえよ」

そう言って、髪の毛をぐちゃぐちゃっとあげた記憶がある。

本当に些細なことだが、妙にあの日の笑顔が忘れられない。


それから数ヶ月後にあいつは突然いなくなってしまった。

そして、あの悲しい日から、3年以上が経った。

教え子でもあり、友達でもあったあいつのことを、ひょんなことから思い出すものである。



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とある商品を、タイのネット通販で買った。

今月中旬のことである。

到着予定日は、9月24日から10月2日。

妙に到着期間が幅広いな、と思いつつも待つ。


しかし、全然音沙汰がない。

ホームページで確認するたび、「注文済み」という画面だけが表示されている。

到着予定日は、まだ過ぎてはいないが、こうも何も動かないと不安になる。

とにかく店側は、無言と無動を貫いているのである。


そうこうしていたら、先ほどメールがきた。

「返金のご用意ができましたので、なんちゃらウォレットを有効化してください」

とある。

ウォレット?


なんだかよくわからないが、買えなかったようだ。

店側が商品を用意できなかったのであろうか。

それならもっと早く言えよ、と思わずにはいられない。


まあ、とりあえず、そのなんちゃらウォレット有効化へ向けて、ホームページから手続きに進む。

有効化するにあたって、まず、タイ人か異国人か聞かれる。

当然、後者と答えところ、「手続きできない」という表示。

パーンとすごいスピードでの表示である。


速攻でお手上げ。

一体どうしたらいいものか。

全く手のつけようがなくて、途方にくれているところである。




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ギンジェー(菜食週間)が、27日から始まった。

ギンジェーは、肉を食べない=動物を殺生しないことによって徳を積むのを第一目的とする。

同時に、菜食に徹することによって体が浄化されるという考え方もあるようだ。


この期間になると、ジェーの店がそこら中に溢れる。

セントラルフェスティバルも、




行きつけのご飯屋さんも、



すっかりジェーである。


かつて、僕もギンジェーに挑戦したことがあった。

その時のツイッターでのつぶやきを見ると、「焼肉が食いたい」だの、「チムチュム(イサーンなべ)が食いたい」とある。

しかもご丁寧に「江古田の焼肉ハウスの焼肉」などと明記しており、妙にローカルで具体的だ。(ツイッターの詳しいつぶやきはこちら


今思い返しても、ギンジェー後半の数日間は、とにかく辛かった。

「ここまでやったからには、やめるにやめられない」「後にはひけない」というのは過酷だったのだ。


あれから10年近く経った。

ジェーに挑戦してはいない。

挑戦しようという思いになったことすら、ない。


でも、時々ジェーのご飯を食べるとおいしい。

今日の昼も美味しくいただいた。

でも、これを10日間以上続けることは、やはりきつい。


「時々、そして短期間」

僕は、これを推奨している。




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風邪を「通過儀礼みたいなもんだ」と前の記事に書いた。

風邪といえば野口先生の『風邪の効用』を思い出す。

日本の整体指導者 野口晴哉氏の体の哲学とでもいえようか。


野口氏によると風邪というのは本来、「治す」とか「絶滅させる」という対象ではない。

風邪は飼いならすべき存在だ。


現代の忙しい社会に生きる我々は、病気を恐ろしいものとだけ考える。

そして、仕事のため、学校のためといって、早く治そう、早く絶滅させようとする。


しかし、野口氏によれば、風邪は本来、自ずから体の状態を改めようとするものである。

「風邪をひくことは、健全な人体の機能」なのだ。

だから「風邪を上手くひくと、さらに健康になる」という気持ちを持って、ゆっくりとバランスを整えていかなくてはならない。


それにも関わらず、現代の我々はその考え方を失った。

人間が生きていく上での「体の自然」を無視している。

そうして、体の本来備わっているはずの飼いならす技術が失われていくのだという。


野口氏はいう。

「風邪をきっちり治せればもう千の病気に対処する力がある。…風邪を上手に経過させる事が出来れば、まず難病を治せると云ってもよい。…」と。


「風邪を上手に経過させる」という考え方、僕は好きである。




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季節の変わり目に弱い僕。
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変な汗が止まらないわりに体の芯が寒いこと。

そこで酵素風呂に浸かってデトックス効果を狙ったこと。

昨日の夜、ブログで述べたとおりだ。


それから、すぐに寝た。

12時間、ずっと布団にいた。

おかげで、だいぶ体が楽になった気がする。


考えてみると、ちょうど去年の今頃も大きな風邪をひいた。

中間試験のテスト監督を友人に代わってもらったものだ。


もっといえば、10月や11月は、子供の頃から体調を崩しやすい期間である。

僕は、季節の変わり目に弱いのだ。


子供の頃は喘息を起こして、大変だった。

吸入はもちろん、ひどいときは点滴、入院なんてこともあったか。

まあ、親に迷惑をかけたものである。


大人になってからは、喘息の発作の頻度は大幅に減ったが、それでも体調をくずこと多々。

見た目はいかついのに、体が弱いというギャップがあるのである。



僕は涼しいのが大好き。

一番好きな季節は、確実に秋と冬だ。

で、最近のチェンマイもそんな匂いがしてきた。

夕方を迎えるのが、早くなってきた。




だいぶ影も長くなってきて、嬉しい限りである。




でも、そんな大好きな季節を迎えるにあたって、体の方は少し崩し気味になってしまうのだ。


でも、ポジティブに考えよう。

きっと、これからの本格的な寒さを迎えるためには、より体力がいる。

だから僕の体はあえていったん体調を崩し、抵抗力を高めようとするのだ。

いわば、通過儀礼みたいなものなのだ。


ということで、今日は無理をせず、通過儀礼を果たそうと思う。


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ビジネスクラス
     
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どうも体調がすぐれない。

妙に汗が出るのに、体の芯が寒い。

全然、体が温まらないのである。

まさか、風邪だろうか。


そこで「調子が悪い時はとにかく温めろ!そうすりゃ、たいがい治る」という考えをもつ僕は、久しぶりに酵素風呂に行った。

米ぬかの酵素風呂店、Ramlamoonである。


ここは、チェンライで修行されたという日本人のオーナーさんが営んでいる。

まだ若いオーナーさんは、たびたびアカ族の村に行って、色々な技術や文化を吸収しているらしい。

山の人々の知恵や技術を学んで、自然と共生する心地よい生き方を提唱する。

これから先、より重要になってくるであろう、面白い考え方である。

(我が家の定番である玄米も、オーナーさんがアカ族の村から買い付けたものなのだ。)


久々に酵素風呂店に到着すると、猫が迎えてくれた。




ニャーニャーと、人懐っこい。


後ろ髪引かれつつ、店内へ。





そして、早速米ぬか酵素風呂に埋まりに、パンツ一丁に。(パンツは貸してくれる)

間違っても、素っ裸で入ってはいけない。



暖かい米ぬかの上を歩き、あらかじめオーナーさんが掘っといてくれた、人の大きさくらいの穴の上に寝っ転がる。

そして、オーナーさんが体全体に米ぬかをかけて、埋めてくれるのだ。


外の鳥の声を聞きながら、目を閉じて、じっと温まる。



気持ちがいい温かさ。

いや、むしろ暑い。

手や足を動かすと、米ぬかはより熱くなる。

酵素菌がどうこうなって、温度が上がるらしいが、詳しいことはわからない。


15分埋まって、汗びっしょりである。

デトックス効果が凄まじい、という。

そして、入浴後も体がポカポカだ。

久々に酵素風呂で温まって、最高であった。


さて今、入浴からかれこれ10時間くらいたったであろうか。

まだ、変に汗がでている。

軽く悪寒もする。

これが風邪ではなく、デトックス効果であることを願うばかりである。



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「先生、質問があるんですけどいいですか?」

ある学生が、部屋をたずねてきた。


「日本の昔の女性は、なぜ本名が残っていないのですか?」

「本名?」


「はい。たとえば、織田信長の奥さんは濃姫ですよね。でも、濃姫も本名ではないですよね」

「ああ、確かに、濃姫というのは美濃国の女性という意味で、通称だね。確か、本名は不明だね」


なかなか珍しい質問である。

というか、20歳くらいのタイの学生にまでその名を轟かせる濃姫の、その幅広さに感心もする。


少し調べてみたところ、江戸時代までは女性の名自体が公的文書に残ることはやはり珍しい。

女性は男性とは違って、公的な名前を持てなかったようだ。

そもそも江戸時代、女性が公的な地位、たとえば庄屋/名主につくこともないから、公的文書に出てこないのだろう。

(ただし、網野善彦先生が備中真鍋島に女性の庄屋がいたことを指摘されている。その名はお千。(日本の歴史をよみなおす))

ということで、日本における男女差別の歴史的な根深さを感じずにはいられないのである。

このへんのこと、あまり知らないので、とりあえず角田文衞『日本の女性名―歴史的展望』を読んでみるべく、アマゾンでポチり。

日本に帰って読んでみようと思う。


「先生」とか呼ばれたって、本当に知らないことだらけだし、学生の素朴な疑問から気づかされること、学ぶことは多々。

ありがたい環境にいさせてもらっているのである。




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さすが雨季、雨続きである。

しかも割と肌寒い日々が続いている。


こうなると困るのが、洗濯物が全く乾かないことだ。

ということで、近所の乾燥機に向かう。





ここは新しくできたばかりの乾燥機屋さん。

乾燥機の隣にカフェが併設されていて、居心地よい空間が演出されている。


働いている人も非常に感じがよく、乾燥を待っていると

「これ、どうぞ」

と、水やジュースを持ってきてくれる。


乾燥機にきて、無料のドリンクをもらうのは、嬉しい。

しかし反面、申し訳ない気持ちにならないでもない。

ということで、いつもコーヒーを買おうと思いつつも、乾燥に向かうのが店の空いていない時間帯でなかなか実現しなかった。


だが、今日は初めてコーヒーを買うことができた。

コーヒーができあがるのに5分以上。

外から見ていても、丁寧に作っているのが伺えた。

「どうぞ」

持ってきてくれたアイスコーヒーには、ナビスコRITZが添えられていた。



「サービスです」

ナイスな笑顔で、そう言われた。


いつも、サービス豊かなこのお店。

気持ちのいい乾燥機屋さん。

今年の雨季、大変お世話になっている。




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「先生にとって国民国家とはなんですか?」

いきなりの学生からの質問。

まあ、同期の友人が今、授業で国民国家の話をしていると聞いていたので、それに関係しているのだろうと思った。


「えー。突然だね。一言で答えるの?

…えー、それなら”必要悪”とか?笑

あるいは”暴力”?笑

それとも”税金”?笑」

現在の日本や世界のニュースを見ている僕の口からは、ネガティブな言葉しか出ないところが、悲しい限りだ。


「想像の共同体」論から30年以上。

国民国家の確かさはますます揺らいでいる。

国民国家は究極の形とは思われなくなった。

アパドゥライがいうように、国境を超えて展開する人やテクノロジーといったフローは、そのことを指し示している。




そして、それが一部の人々の国家に対する安心感を喪失させ、反動として強烈な国民国家への執着が生まれている。

マイノリティに対する暴力も強くなる一方だ。


そんな状態を見ていると、どうしても「国民国家とは?」と聞かれても、肯定的な意見が出ない。

悲しい限りだし、あまりネガティブなことを学生に言いたくはないんだけどねえ。


現在、インターネット環境を軸にして、5Gやブロックチェーンを利用した新たな時代が到来しようとしている。

それによって今後、今までは考えもつかなかったような共同性が形成され始めるだろう。

国民国家とは違う、新しい共同性。

仕組みや、それを支える考え方が、全く異なる共同性。


僕はチェンマイに住み、異文化に触れながら教員として生活しているが、もうすぐそんな新しい社会が訪れるはず。

その未来像を、どこまで想像できるか。

新しい共同性と自己をどう関係させて、生きていくべきか。

考えていかなくてはいけないだろう。


ということで、とりあえず次に学生に質問されたら、もっとポジティブにこう答えよう。

「国民国家は、新たな共同性を考える伸びしろをもつ、不完全な共同性かな」ってね。



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今日の文学の授業は、清少納言『枕草子』である。


春はあけぼの…

その中に出てくる「山際」の言葉。

秋は夕暮れ…

その中に出てくる「山の端」の言葉。


二つの言葉の違いを説明したら、「日本語ってそんなとこまでこだわってるんだ」と皆、半分呆れているのか、笑っていた。


そして、

「こういう風にそれぞれの季節における、美しい時間帯をあげて、その情景を述べていくんだね。

タイもこういう感覚あるかい?

たとえば、雨季は…とか」


「雨季は…洪水ですね」

「おー」

「おー」じゃねえよ、美しいところ、時間帯よ…。


とはいえ、ふと思い返す。

圧倒的に暴力的で破壊的なものは、時に美しくさせ見えるという意味だったのだろうか。

昔、バンコクからロッブリーに帰る電車の中、車窓から見えたアユタヤーの洪水は、不謹慎ながらも美しかった。




もし、学生たちはそのあたりまで汲んで、雨季といえば洪水と言ったとすれば。

一体、いつの時間帯なのだろうか。

やはり夕暮れか。

次回、掘り下げてみよう。




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今学期から新しく開講された「信仰」の授業。

これまで蛇や他界、言霊、穢れ…といった内容を講義してきた。


以前、講義中に『君の名は。』の話になった。

この映画は何かと信仰に関わることが多く出てくる。


そこで、学生らとともに映画を鑑賞しながら、信仰に関係することがらを取り出していくという授業を行った。

学生はやっぱり頭が柔軟で、視野が広いなあと感心した。


「黄昏時と境界性」「糸と結び」「口神酒」「あの世とこの世」といった点は、真っ先に気がついていたようで、声が上がった。

「言霊は何があったか?」という僕の質問についても、すぐに答えがかえってきた。

中でも、主人公三葉が「こんな町いやだー。東京に行きたいー」的なことを言って、次に実際に瀧に入れ替わって東京で目覚めるという、言霊の力。

さらに、その言霊を発した場所が、田舎町の象徴的な境界にあたる鳥居の下で実践された、ということを指摘されたのには驚いた。


映画を見ながら、カリカリとメモをとる学生たちの姿をみて、「頼もしいなあ」と思っていた。

そして、僕の期待以上に多くの点を読み取っていて、驚かされたのである。


ただ彼らが、すぐには気づかなかったことがあった。

それは、三葉と瀧の最後の出会い(というか再会)のシーン。

二人は涙をこぼしながら、

「君の名は…?」

と同時に尋ねて、エンディングロールが流れるところだ。


これが一度授業で行った万葉集の第一の歌、雄略天皇の歌(とされている)と全く同じ意味にあることに、学生たちは気づかなかったのである。


そこで、二人が出会うシーンの映像を流しながら、

「えー、きづかない?言霊の授業で、勉強したことない?」

とヒントを与えた。


「あー、あー」

「あー、あれだー」

「えーと、プロポーズだ!求愛だ!」


皆がほぼ気づき始め、最後に求愛のワードが出たと同時に、RADWIMPSがタイミングよく流れた。

なんともドラマティックに授業が終わったみたいになり、皆で「おー」っとなった。


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先日20日、タイの免許のモバイルアプリ『DLT QR LICENCE』が正式に発表された。
(紫な画面がいなせだ)

ポイント制の導入などを盛り込んだ新たな道交法の施行に伴うものらしい。


これによって免許を携帯しなくても、アプリで見せればいいようだ。

とはいえ、警察官に止められた際にアプリを見せたら、

「はぁ?なんだお前、ふざけてんのか?」

とか言われそうな気も若干するので、なるべく実物の免許を持ち歩くようにはするが…。


とりあえずアプリを入れてみた。

これがすこぶる簡単。

アプリストアーで、「DLT QR LICENCE」と検索かければすぐにアプリが出てくる。

ダウンロードして、パスポート番号とメールアドレスを登録。

そして、自分の免許の裏にあるQRコードを読み取ったら、もうアプリ内の画面には自分の免許が出ているのである。


いやー、これでなんらかの事情で免許を持っていないときでも、安心。

いや…、まだ「はぁ?」とか言われる心配もあるから、半安心だ。




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