逆に緊張の北部タイ・日本語スピーチコンテスト。





北部タイでは毎年、大学生による日本語スピーチコンテストが行われる。

北部タイの各大学から応募した学生たちのうち、数十人が選抜されて、スピーチを競い合うのだ。


1位は、上智大学への留学1年分。

学費も生活費も支給されるということで、上智大学はなんともすばらしい。


2位は、 Bangkok Airways と JAL から、北タイ⇔日本への往復航空券2名分。プラスJCCからのお小遣い1万バーツ。


3位はスマホ・・・

他にもテレビやら何やらと、多くの賞が用意されている。

学生にとって、なんとも魅力的なコンテストなのである。



さて、今年、北タイの各大学から、スピーチ大会に選抜された学生は全部で20人。

そのうち、僕の大学からは4人が選ばれた。


僕は1人の学生の面倒を主にみた。

去年、学内でのスピーチ大会から面倒をみていた子。

なおかつ、文学史を専攻している学生でもある。


内容は、宝くじについて仏教・信仰を関わらせたものだ。

去年の学内スピーチ大会では真ん中くらいの順位だった。

「内容は面白いが、発音に難有り」

それが去年審査員の方々から主に指摘されたことだった。



この学生は、比較的マイペースな子で、

「一応、去年の原稿を送ってみたら、通っちゃいました、先生~。去年スピーチ大会で覚えたはずだけど、もう全部忘れちゃいましたね。ははは~」

「ま、そりゃそうだな、へへへっ」

僕も元来適当な性格なので、お互い別にあせりもしなかった。



そして、本番1週間前。

あーだ、こーだと直したりしていて、学生は原稿を覚えていなかった。



いや、もっといえば、実は3日前の予行練習のときも完璧には覚えていなかった。

5分以内のスピーチなのに、覚えていないこともあって、7分もかかっていた。

他の3人は完全に仕上げてきている中で、我々コンビだけが出来ていない組だった。



「大丈夫、大丈夫。本番前に仕上げないほうが、逆にいい。トップスピードにのるのは、本番の土曜日。それにあわせていこう」

根拠のない僕の言葉に、学生も「その通りだ」と、深くうなずいた。

お互い、妙な開きなおりがあったのである。



その日から、ようやく2人はギアをいれた感じで、毎日居残り練習をはじめた。

夜には、学生はスピーチを録音して、僕にラインで送った。

次の日に、その録音を2人で確認しながら聞いた。


「おーい、先生。カルチャーショック」

あまりに全ての自分の発音をなおされる学生は、そう言った。

カルチャーショックの語の正しい使い方かどうか、定かではない。



そして、当日。

学生がスピーチをする午後、僕は別のセミナーの司会の仕事があったため、直接応援することはできなかった。


ただ、午前中に学生と会場で会うことはできた。

相変わらず力の入っていない感じで、普通に朝飯を食べていた。

「ま、その感じでがんばれよ。大丈夫、ものすごくうまくなっているよ」

「はい~、OKです。」

なんだか、学生よりも僕のほうが緊張していた感があった。



セミナー司会中も気になって仕方なかった。

何度も携帯を確認した。


もう大会も終わりの頃、ラインがきた。

動画が添付されていた。

なんか色々と手にもって、踊ってる。




「先生!!!!!!!2番目です!2番目!!!!」

メッセージ。

僕はゾワーと鳥肌が立った。


スピーチの様子を動画で見ると、今までで一番の出来だった。





本番に強い子だ。

3日前まで全く出来なかった子が、本番にまでコンディションを高めて2位。

ある意味、ドラマティックだ。

はっきりいって、感心した。



学生と、おめでとうだのなんだのと、メールのやり取りをした。

最後、

「よかったね。セミナー終わったから、今から急いで会場に戻るね」

「いや、先生、もう私たち帰りましたよ。今、焼肉を食べてます」

うーん。この温度差。やはり、マイペースだ。

もしや、JCCからのお小遣い1万バーツでパーと…。


ま、でも、本当におめでとう。



できれば、僕もこのチェンマイ大の面々とともに、写真に写りたかった。




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2 件のコメント:

  1. こういう本番に強い子って羨ましいです〜。
    お話の内容もいいし、ゆる〜い感じだったのにきっちり2位になったのも先生が良いからですか?(笑)
    おめでとうございます♪

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  2. 先生がよいわけではないですよー。
    肩に力が入ってなかったのが、よかったんじゃないですかね。笑

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