ワットプーの遺跡に向かう参道を歩いていると、おばちゃん数人が、木陰で座り込んでいた。
どうやら、観光客にサーイシン(聖糸)を施しているようだ。
サーイシン。
イサーンやラオスではすっかりお馴染みの、魂を強化する儀礼。
呪文を唱えながら、手首に紐を巻きつける。
「健康が続くように・・・」
「たくさん幸せになるように・・・」
「安全に日々過ごせるように・・・」
などなど、だ。
僕がタイ東北部イサーンでいつもお世話になっている家から、バンコクに戻る際は、年長者が必ずサーイシンを施してくれる。
「元気でね。私たちのことを忘れずに、必ず村に戻って来るんだよ。・・・」
僕はいつも決まってホロリとなる。
大きな元気をもらう。
「魂を強化する儀礼」とは、よく言ったものである。
さて、ワットプーのサーイシンおばちゃんたち。
どうやら気持ち程度の礼金をとってのサーイシン儀礼のようだが、まぁ、ワットプーでそれを受けるのも悪くはないだろう。
ということで、
「おばちゃん、よろしくお願いします」
右手を差し出した。
「安全な旅になりますように・・・健康でありますように・・・幸せでありますように・・・」
おばちゃんは、呪文を唱えながら、僕の手首に糸を巻きつけた。
こなれた動作が、小気味いい。
サーイシンが終わると、僕はワーイ(手を合わせる、タイ式挨拶)をして、気持ち程度の礼金を差し出した。
「いつも、ここでサーイシンをしているの?」
灼熱の暑さの中、尋ねてみた。
「そうだね。毎日じゃないけど、よく来ているよ。
こうして友達と話をしているのが楽しいのよ。
それに、観光客がサーイシンを受けて、サバーイジャイ(気分良く)で帰ってくれるのも嬉しいしね。
この遺跡に来たことを、よかったなぁと思ってもらえればいいね・・・
それくらい、この遺跡は素敵だよ・・・」
灼熱の中で、サーイシンおばちゃんは答えた。
おばちゃんたちにとってワットプーは、大事な信仰対象の場であり、憩いの場でもあり、そして世界に誇る地域の財産でもある。
少しでも、ワットプーに対していい思い出をもって、帰ってほしい、というのは当然だろう。
そして、実際、僕はおばちゃんたちと話をして、サーイシンを受けて、元気をもらったし、ワットプーのなかでのいいワンシーンになった。
遺跡を中心にして、いろいろな人、思いが交叉する、ってなもんだ。
それにしても、あまりに灼熱ワットプー。
日射病や熱中症にならない(たぶん)、サーイシンおばちゃんたちのパワー(たぶん)は、圧巻だ。
応援のほど、よろしくお願いいたします
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