「アリガトウ!」と少女。連鎖する幸せ。

「写真、どうですか?」

食堂でおばちゃんとの会話を終え、ワットプーに着いたものの、「遺跡はあんな丘を登らねばならないのかぁ」と、少しげんなりしている時、声をかけられた。




最近、遺跡や寺といった観光地でよく見かける、こうしたカメラマン。

名所をバックに写真を撮って、その場で現像してくれる。



遺跡をバックに自分が被写体となるには、自分のカメラのタイマーを駆使して、遺跡の前を右往左往することになるので、その意味ではこのカメラマンに頼むのは楽といえば楽である。

値段も大したことないし、ということで、一枚パシャリ。




「これで、いいかい?」

カメラの液晶画面には、妙に半笑いの、とぼけた顔した僕の姿が、ぬぼーと映し出されていた。

遺跡が壮大で綺麗なだけに、自分が妙に貧相だ。

だが、撮り直したところでどうしようもないので、僕はあっさりとOKを出した。




カメラマンのおっちゃんは、近くにいたおばちゃん(おそらく奥さんだろう)にSDカードを渡した。

おばちゃんはスタスタと、何故か木々のほうへと、現像に向かっていった。




さて、写真を撮り終えたおっちゃんは、一仕事終えたという感じで座り込み、子供と遊びはじめた。




子供は、嬉しそうに、なにやら体に悪そうな色のジュースやら、お菓子を食べている。




子供は、日本人の僕が気になるのか、ちらちら見る。

子供の澄んだ目が印象的だ。

そこで、僕はカメラを向けた。




おっちゃんに、写真に写れてよかったな、みたいなことを言われると、

「アリガトウ!」

子供は、日本語でそう叫んだ。




「日本語しゃべれるの?」

「ここによく来る日本人のとある女性が、教えてくれているんだ」

おっちゃんはそう言って、子供の頭をなでた。



「アリガトウ!」


子供は、連呼する。

そのたびに、僕も、おっちゃんも、周りにいた人々も、微笑ましく子供を眺める。

そんな周りの視線が、子供心に嬉しいのか、何度も何度も子供は叫んだ。


「アリガトウ!」



日本から遠く離れた田舎の地で、ある女性の方が日本語を教えている。

そのおかげで、周りがなんだかホワーンと癒される。

ちょっとしたことかもしれませんが、幸せな気持ちが人から人へ、連鎖していくような気がしましたよ、日本人女性の方~。









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2 件のコメント:

  1. いい話です。プーケットやバリで怪しい日本語を教える輩に聞かせたいですね。

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  2. コメント、ありがとうございます。
    プーケットやバリで怪しい日本語を教える輩・・・、ですか。笑
    そうですね。この子に教えている方は、そういう日本語教師ではなさそうですねぇ。
    きっと今後、もっとたくさんの日本語(いい言葉)を教えることでしょうね。

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