ピーターコーン祭りの舞台裏で、ひっそりと異界へ流される先祖霊。




ピーターコーン祭り最大の盛り上がりを見せる、ウェートサンドン入城行列が終わると、ヂャオ・ポー・グアン(男性シャーマン)らは、ブン・バンファイを行う。

雨乞いのための、ロケット打ち上げ祭りである。

8年前に見たときは、目の前で暴発したなんてこともあった。


今年は、ブン・バンファイは見ずに、急いでマン川の方へ向かった。

当然、誰もギャラリーはいない。

しかし、ここでピーターコーン祭りにおいて、欠かすことのできない重要なことが行われる。

この川を伝ってピーターコーン・ヤイ(先祖霊)は、ほとんどの人に見られることなく、異界へとひっそり帰るのである。


かつて諏訪春雄は『日中比較芸能史』において、先祖霊が共同体に来訪する祭りは、象徴的に始原の状態になるとした。

始原の状態において、地域の人々が先祖に対して、正しく文化が受け継がれていることを提示する。

そしてそれを見届けた先祖霊はまた異界へと帰る、ということを毎年繰り返すのだ。


ピーターコーン祭りも同じである。

先祖霊はダーンサーイ郡にやってきて、我々と一緒に祭りを楽しんだ後、ひっそりと川に流され、異界へと帰っていくのである。


ピーターコーン・ヤイは川をゆっくりと流れていった。


そして、川はカーブし、見えなくなった。


ピーターコーン祭りやブン・バンファイは華やかな表舞台にある儀礼・祭礼である。

それを裏で支える先祖霊は、ひっそりと流れ、異界へと向かった。

また来年、地域に戻ってくるまで、しばしのお別れである。


ちなみに、かつてはピーターコーン・レック(精霊)のお面も川に流さなければならなかったという。

精霊=異人だから、当然、異界の地へ返さなければならなかったからだ。

しかし、今では芸術的価値の観点から、流されなくなったらしい。

精霊は異界に帰る場を失いつつあるのかもしれない。



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