ナーラーイ王祭と遺跡保存



ロッブリー市内では、年に一度の祭典、ナーラーイ王祭りが開催されている。

ナーラーイ宮殿にて、2月13日から2月21日まで行われる。

僕自身、この祭りに参加するのはもう3度目。

街の遺跡は花で華やかに彩られ、タイの伝統的衣装に身を包んだ人たちが街に溢れることは、もうすっかり見慣れた光景だ。


この祭りは、実はゲーテ先生がナーラーイ宮殿博物館の館長を勤めていた時代に始めたものである。

当初は、ナーラーイ王を偲ぶために、王の命日に、みなで伝統衣装を身にまとい、慎ましく行われていたという。


しかし、そんな祭りは、今ではすっかりショー化してしまい、遺跡保存の観点からすれば疑問視されるものになってしまった。

たとえば、タイ国内でもかなり珍しいとされる遺跡内の石畳は、何百万という人々に踏まれてきただけでなく、祭りの期間中はバイクも通ったりして、壊れる寸前である。





遺跡の真ん中に作られた特設ステージでは、全く関係のないコンサートが若者によって行われ、巨大な音がなりひびく。


いうならば、ゲーテ先生が意図していた以上に祭りは巨大にふくれあがり、先生の手の届かないところにいってしまったのである。

それは現在、遺跡博物館の館長をされている先生(ゲーテ先生の弟子)にも、止めることができない。


理由は簡単である。

この祭りのもつ経済効果は絶大であり、それを支持するグループが圧倒多数だからだ。

彼らの圧力はことさら強く、時に過激だという。

経済効果を重視する側からすれば、遺跡が傷つくことはさしたる問題ではなく、そして遺跡を人類の遺産として長期的に保存していくという意識は低いのであろう。


確かに祭りは、美しく、華やかで、楽しい。

もちろん、僕も好きだ。

しかし、遺跡は過去からの遺産であり、未来に向けて保存しなければならない、ということも決して忘れてはならない。


だとすれば、やはり祭りの当初の目的に立ち返り、そのコンセプトに従ったものだけを実施することや、遺跡が傷つかないように対策をとることが求められる。

そして何より、遺跡保存の意識を人々に芽生えさせる点が基本となるであろう。

なにせ、祭りに参加している大部分の人たちは、無意識のうちに遺跡の”破壊”に加担しているにすぎないからだ。


今僕がいる大学は、地域に密着した教育を重視しているので、教員は遺跡保存の重要性を訴え、学生に意識化させることができる立場にある。

地域の遺跡保存のリーダーとして、非常に大きな役割を果たせるだろう。

ということで、僕も微力ながら、授業で訴えていかなければならない、と思う。

「日本の遺物保存」なんて授業、いいかも。

ただ、問題は、僕がその分野の知識がまったくもってないことである。

勉強しなくてはならない。





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4 件のコメント:

  1. タイの人は遺跡は見慣れててあまり大事なものという意識がないのでしょうかねー?
    壊れたら二度と同じものは作れないのに・・。
    Ryotaさんも生徒に教えるために自分も新たに知識を深めるって大変だけど素晴らしいことですね。

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  2. いえ、いえ。とんでもないですよ。
    基本ぐーたらなので、なかなか知識は深まらず、です。笑

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