祭りの夜。
裸電球をぶら下げた出店が現れ、そこでは、悲喜こもごもの人生模様が垣間みれる。
まぁ、それはちょっと大げさな言い方かもしれないが、それでもそんな様子は日本もタイも変わらない。
色んな店が並ぶ。
たとえば子供のためのルーレット場、(大人も夢中になる。というか大人の方が…ピンキーなおばちゃんを見てもお分かりいただけよう)
ボールゲームの場、(白い部分にボールをあてて、跳ね返ったボールが箱の中に入ればOK。これがすこぶる難しい…本当に)
(全員、失敗。ちなみに僕もやったが駄目)
缶をすべて落とすゲームなどなどだ。
そんな中、缶落としに挑戦するタンクトップのおっちゃん。
後ろ姿は真剣そのものだ。
背後で娘が見守っている。
おっちゃんは娘のために景品獲得を目指しているのである。
何度か挑戦するが、すべて失敗。
おっちゃんは一見強面だが、失敗するたびに爆笑。
「駄目だ、こりゃ!」
そう僕に言って、豪快に笑っている。
娘はちょいと照れくさそうだ。
何度か挑戦し、ついにおっちゃんはあきらめた様子。
そこで僕は、おっちゃんのもとを離れてウロウロする。
すると違う場で、笑みを浮かべてクッションを抱えたおっちゃんに出会った。
どこか勝ち誇っている。
「お!取れたんですね」
僕はおっちゃんに話しかけた。
「いや、買ったんだ!」
そう言いながらおっちゃんは爆笑した。
「買ったんですか?」
僕もつられて笑った。
「いや、いや。そんなわけにはいかないですよ。お父さん。これは景品ですから、ゲームでとって下さい」
店の人に言われた。
そんな…
笑顔が消えたおっちゃん。
笑っていないと、ちょっと怖い。
「そんなこと言うなよ。いいじゃないか」
交渉するおっちゃん。
「いや、いや。お父さん。あのですね…」
説得する店員。
なんてことだ…
そんな雰囲気が立ちこめる。
おっちゃんは、ちらりと娘を見やった。
”娘は景品をほしがっている。ここで引く訳にはいかない”
そう考えたのだろう。
おっちゃんは交渉を再開した。
「分かった。もう一度ゲームはやる。それで勝ったら景品はもちろんもらう。でも、もし負けたらその時は売ってくれ」
食い下がるおっちゃん。
結局、店の人も根負けし、○○バーツで売ることが決まった。(いくらか不明)
パーと表情が明るくなる。
「ハッハッハ。よーし、決まりだ。やるぞ」
と、おっちゃんは爆笑した。
店の人もおっちゃんの豪快な性格につられて笑う。
僕を含めたギャラリーももちろん笑う。
反面、娘はかなり照れくさそうにしている。
何度か「もういいよ、お父さん」とも。
だが、そんな娘を他所に、おっちゃんは静かに勝負の場に立った。
背後で見守る娘。
娘はこれまでおっちゃんの背中を見てきて育ったのだ。
ここまできて引くような父ではないことは一番良く分かっている。
ということで、獲物を手に半笑いで見守ることにしたようである。
真剣なおっちゃん。
周りも息をのむ。
ビュッ、ビュッ、ビュッ。
3回ボールを投げた。
「ああ!駄目だ〜。くっそ〜」
おっちゃんはそう言って、財布に手をかけた。
「ごめんな〜。娘よ。取れなかった。買い取るぞ!」
豪快に笑いながらクッション代を支払った。
そしておっちゃんは、クッションを抱える娘の頭をなでながら夜道を歩いて行った。
照れながらも、大事そうにクッションを抱える娘の姿が印象的だった。
娘は将来、祭りのときや、出店を見るたびにこの日のことを思いだすかもしれない。
周囲を気にせず、豪快に突っ走るおっちゃん。
そんなおっちゃんの背中を娘は見て育ってきたし、これからもそうだろう。
一緒にいるとちょっと恥ずかしいときもあるかもしれない。
でもおっちゃんは、いつも娘を思って突っ走っている。
豪快に笑っている。
豪快に笑っている。
”お父さんの背中はいつも大きかったなぁ”
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何だか泣かせるじゃぁないですかーRyotaさん。
返信削除日本の縁日と同じ感じだけど、こういう親子の風景を日本で
見たことあったかなぁ?と考えてしまいました。
とっても心温まりますね。と思いつつ、
ついついありゃ?キティーちゃん?ドラえもん?なところに
クスっと笑ってしまう・・。
キティやドラえもん、プーさん…オンパレードですよね。笑 さすがタイ!って感じです。
返信削除僕はこのおっちゃんと少しの間接していて本当に爆笑しましたが、それでもなんか同時に少しの物悲しさも感じたんですよね。
悲し面白いというか。ま、おっちゃんにしたら「余計なお世話だ!」みたいな感じでしょうけどね。笑
でも、なんかいいな〜って思いましたね。