ウボン国立公文書館
朝9時ちょうどに、オカマの学芸員Pさんから電話がかかってきた。
9時に公文書館前で会う約束をしていたのに、僕はまだ到着していなかったのだ。
こういっては何だが、タイ人がピッタリの時間に電話をかけてきたことに、正直驚きを隠せなかった。タイ人の約束時間なんて、あってないようなもん、みたいに思っているところがあるからだ(失礼かな?)。
ということで、すっかりタイ化している僕は、まだ公文書館に向かう道中であることを告げてお詫びした。
こんなタイ化は、いうまでもなく、よくないことだ。
さて、公文書館は市街から結構離れたところにあった。
トゥクトゥクがウボンの公文書館のある広い敷地内に滑り込むと、そこにサングラスをかけてタバコをふかす、Pさんがいた。
「遅れてごめんなさい」
「大丈夫、大丈夫。さぁ、こっち」
公文書館はまだ新しい建物だった。
中に入ると、数人の女性がいて、一人一人紹介された。
僕も簡単に挨拶した。
机の上には、すでにPさんによって選ばれたらしい、数冊の本が置かれていた。
Pさんによると、探し出せたのはこれだけで、今後も、もし見つけだしたらそのつど、教えてくれるという。ので、とりあえずは、今ある限りの本を夕方までに、コピーしくればいいと提案してくれた。
非常にありがたい話である。
そのあとは、室内で皆と軽く雑談。
すると、昔タイへの留学を控えていた僕に、いろいろとアドバイスをしてくれた日本の方の名前が出てきて、驚いた。
その方は、よくこの公文書館に来ているとのことだった。今、ウボン国立大学で教鞭をとっているという。
こんなところで、知り合いの名前を聞くとは。うーん。社会は意外と狭いものである。
さて、この後ウボンラーチャパット大学で、A先生と会う約束があった僕は公文書館を後にしようとしたが、Pさんが、
「目の前にある芸術事務所にも資料があるかもしれないから、ちょっと行ってみる?」
と提案した。
そこで、まだ多少の時間があった僕は、そっちにも行ってみることにした。
公文書館から外に出ると容赦ない日差しが照りつけた。芸術事務所と公文書館は向かい合わせにあり、歩いて2、3分くらいの距離だが、その短い距離を歩くのも億劫なほどの日差しだった。
道中、Pさんが自身の恋愛の遍歴を話し始めた。どうして突然に話し始めたのか、あまり意味が分からなかったが、昔、日本の男性とお付き合いをしていたらしい。
へぇーと答えてはいたが、外の暑さがもっと気になっていた。
まぁ、まったくの余談だ。
さて、芸術事務所に入ると、結構な人数の方々が働いていた。
Pさんは、人々に僕を紹介した。僕は、ワーイをして簡単に挨拶をした。
その中に、Pさんの上司の女性がいたのだが、そのひとは、僕と同じタイ・バンコクの大学院の出身。学部も一緒で、在籍していた期間もほとんど一緒だった。
しかも僕が、これまで大変お世話になっているB先生と非常に仲が良いことを知った。
ここでも、また社会の狭さを感じずにはいられなかった。
Pさんとの偶然の出会いから始まって、身近な知り合いの名前まで到達した。なんか、すごいスピードで一巡したような、そんな感じがした。
そして、30分ほど、芸術事務所の資料を見せてもらったあと、僕はウボンラーチャパット大学へ向かうために、事務所を後にした。
ちなみに、公文書館と芸術事務所の資料。結構使えそうだった。
(続く)
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