ウボン県におけるブン・パウェート儀礼②     ~儀礼を護るプラ・ウッパクット~




2月26日、朝9時過ぎ。すでに、ウボン県のトゥンシームアン寺は、多くの人びとで賑わっていた。

沢山の子供たちが、学校ごとに行列をなして寺の周囲を回り、そしてそれを大人たちはワイワイ眺めていた。


                  <子供行列>


僕は、子供の行列にはさほど興味がなかったので、境内に用意された特設ステージの方へ足を運んだ。

そこで目に留まったのは、ステージ脇の大木の下にある小さな小屋のようなものだ。


         <大木の下に作られた、仏像を安置する台>


中を覗き込むと、なんともかわいらしい仏像が、静かに座している。


            <かわいらしいプラ・ウッパクット>


仏像の名前は”プラ・ウッパクット”と記されている。

プラ・ウッパクットは、竹とバナナの葉で作られた台の上に安置されていた。台の高さは1.5mくらいだろうか。




そして仏像の周りには、バナナの葉で作られた飾りものや布などが供えられていた。





プラ・ウッパクットについての知識がない僕は、周囲にいた老人たちにこの仏像について尋ねてまわった。

皆が言うには、このかわいらしいプラ・ウッパクットは、儀礼そのものを保護する役割をもつということ。事故や災難が起こることなく、儀礼が無事に終わるように、プラ・ウッパクットが祀られるというのだ。

そこで僕は、イサーンで行われる数々の儀礼すべてにおいて、プラ・ウッパクットが祀られるのかを尋ねてみたところ、どうやらそうではないらしい。プラ・ウッパクットは、ブン・パウェートの儀礼のときのみ、つまり一年に一回だけ、開帳されるのだ。

なぜ、ブン・パウェートのときだけなのか、そのへんの理由は、皆知らないらしい。今後、調べてみる余地がありそうだ。


さてさて、プラ・ウッパクットをもう少し詳しく見てみたい。

プラ・ウッパクットの右手は、降魔印(ごうまいん)と呼ばれるポーズをとっている。



降魔印とは、右手の指先が地面に軽く触れているポーズで、これは悪魔を退散させる意味を持つ。

話によると、修行中のお釈迦様のもとに、修行を邪魔する悪魔がやってきた。そこで、お釈迦様は、指先を地面に触れて、地神を出現させ、悪魔を退散させたという。そのシーンを象徴するポーズが、降魔印なのである。

降魔印のポーズをとる仏像は一様に座像となっており、このプラ・ウッパクットも例外ではないようだ。


次にプラ・ウッパクットの頭を見る。



頭になにやら乗せている。どうやら蓮の葉のよう。

そこで、近くにいた僧侶に確認したところ、やはり蓮の葉とつぼみだそうだ。ビヨーンと、頭の先がとがっているのは、蓮のつぼみをあらわしているのだ。

よってどうやら、プラ・ウッパクットは”ブアケム”のことらしい。(”ブア”は蓮を意味し、”ケム”は針を意味する)

ブアケムとは、昔から、災害などから身を守ってくれると人びとに信じられている仏陀である。


以上から分かることは、どうやら、プラ・ウッパクットというのは、悪魔や災難を追い払う降魔印のポーズをとった、ブアケムであるということだ。

だから、寺にいた老人や僧侶が語るプラ・ウッパクットの役割ーブン・パウェート儀礼に災難がないようにするーと一致するといえよう。

かわいらしいルックスなのに、すごいパワーなんだなぁ。

そう考えると、大木をバックにしたこの小屋全体の雰囲気が荘厳に見えるから不思議なものだ。




ちなみに、プラ・ウッパクットが、ブン・パウェート儀礼のみに開帳されることの理由は、次回イサーンに行ったときに村人や僧侶に再度聴いてみるので、分かり次第お伝えしたい。

(続く)




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