タクシン氏の地域政策とベーシック・インカム



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16日朝。

アヌサワリーチャイ(戦勝記念塔)は、非常に静かで、いつもと変わらぬ光景だった。どうやら、タクシン派赤服は、まだ目立った動きを見せていないようだ。


とはいえ、ニュースによると、赤服は着々と行動を始めていた。

本日夕方、赤服軍団は、首相官邸前に血液100万CCをばら撒く予定で、そのために、今、10万人分の採血が行われているのだ。



血液をばら撒く・・・。なんだかよく分からない作戦だ。国際的にもいい印象を与えるものではないことは、確実だ。

それに、実際のところ、ツイッター上でのタイ人たちのつぶやきを読んでみても、評判は悪い。

赤服の一部の連中が考えた作戦なんだろうが、まったくもって困った作戦だ。

どうなることやら・・・・。



さて、日々の赤服行動に追われて、すっかり、タクシン氏がかつて行ってきた政策についての続きを、記すことができなかった。久しぶりにそっちについて触れよう。

今回は、かつてタクシン氏が行った地方の経済振興政策を取り上げる。



タクシン氏の政治は、マスコミなどによく、地方の大衆に迎合したポピュリズム的政治だと批判を受けてきた。タクシン氏は、それだけ地方に金をばら撒いてきたわけだ。

そんなポピュリズム的な政治運営の代表としてよく挙げられる制度とは、

①健康保険制度整備(30バーツ医療制度)
②村落・都市コミュニティ基金と、人民銀行の設置
③一村一品運動(OTOP)
④農民の負債返済期限の猶予


などである。

①の30バーツ医療制度とは、無保険者救済医療制度のことをいう。保険に加入していない農民や自営業者、零細商人など低所得者層を対象とする保険制度で、どんな病気でも(例外もあり。整形や性転換など)一律30バーツ(約84円)で治療を受けられるという、低所得者にとって非常にうれしい政策だ。

②の村落・都市コミュニティ基金は、全国7万5千以上の村と都市コミュニティに、100万バーツの融資をするために設置された。また、人民銀行は、信用力のない零細商人が、無担保で融資を受けることができるように設置された銀行である。

③の一村一品運動(OTOP)は、各村にビジネスチャンスが与えられるように奨励されたもの。各村の特産品を展示会や輸出を通じて広げていく。大分県の一村一品運動のアイディアが導入されている。

④については、農民が農民・協同組合銀行から受けた融資の返済期限を3年間延ばし、その期間の利子については政府が負担するというもの。



こうした政策を実施することにより、タクシン氏は、マスコミなどから、ばら撒き政策、ポピュリズム的政策として批判されるにいたったわけだ。

ただ、タクシン氏は、単純に人気取りのためだけに、地方に金をばら撒いていたかというと、そういうわけではなさそうだ。

末廣氏によると、タクシン氏が地方に関して一番問題視したのは、都市部と農村部の結果としての格差や不平等についてではなく、両者がおかれているビジネスチャンスや資金の不平等性だったという。つまり、両者が経済的な格差が生まれるその原因=ビジネスを行える環境が地方には整っていないこと、をタクシン氏は問題視したのだ。

そこで、タクシン氏は、地域の経済的な振興を目指したコミュニティビジネスを実施するために、その環境を整えてやることが、一番大事なことだと考えた。

OTOPを推進することによって各村によるビジネス経営を、そして、一連の金に関する政策を実施することによってビジネス資金を、地方に与えたのだ。まぁ、確かに結果としては地方に金をばら撒いているのであるが、目指したのはあくまでもコミュニティビジネスの発展による地域振興、自立なのである。

そして実際、これら地方の経済政策は、好結果をもたらした。OTOPもかなりの実績を上げているという。タクシンの地域振興は一定度の成果を得ているわけである。

そして、なによりそれによって、タクシンが得たもの。それはまぎれもなく、タイ国内で所得の低い地域であるタイ東北部イサーンをはじめとした、各地方の人々から絶大なる支持・人気である。


ということで、タクシン氏は地域のコミュニティビジネスを発展させることによる地域振興を目指して、地方向けの経済政策を行った。それは結果として、ダイレクトに民衆の生活に響き、人々の心をつかむにいたった、というわけである。


そんなことが土台となって、今回の赤服の大規模な反政府運動に発展。

しかしまぁ、まさか血をばら撒くという行為にまでいくとはなぁ・・・。


ちなみにだけど、ここ数年、なにかと話題になっているベーシック・インカム(山崎元氏のブログなどが詳しい)。

ベーシック・インカムとは、社会を構成する人すべての個人に対して、生きていけるだけの一定の収入を毎月払うというシステム。ベーシック・インカム制度が導入されれば、個人に対して毎月一定度の収入があるから、別段働かなくても死ぬことはないので、芸術や学問など好きなことを貫いて生きたい人にはとってもいいシステムだ。言うならばベーシック・インカムは、好きなことに没頭するための最低環境を整えてあげるよ、というシステムとなわけだ。

なんか、タクシン氏の地方に対する政策と、最終目的こそまったく違えど、”環境を整えてチャンスを増やす”という方法論としての意味では同じように感じる。

参考
タイ 中進国の模索 (岩波新書)


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2 コメント:

匿名 at: 2010年3月16日 20:33 さんのコメント...

ベーシックインカムはホリエモンも勧めてるね。
ま、知ってるとは思うが。

Ryota Wakasone(若曽根了太) at: 2010年3月16日 20:41 さんのコメント...

そうですね。僕としても、気になるシステムです。

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