タイ社会では、オカマは生きやすい?



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オカマの学芸員Pさんと再度会ったのは、ブンパウェート儀礼を見るためにウボンに訪れたときだった。

ブンパウェート儀礼のなかのパウェートサンドン行列は、ウボン国立博物館前を基点として行われたのであるが、そこで、Pさんの上司が僕を見かけたのだという。

そして、それを上司から聴いたPさんは、みんなで飯でも一緒に食べようと僕を誘ってくれたのだ。



公文書館での仕事を終えたPさんから連絡を受けたとき、僕はウボン国立博物館付近にいた。Pさんはちょうどいいと言って、そこで待つよう僕に指示した。

電話を受けてから15分ほどで、Pさんはトゥクトゥクに乗って颯爽とやってきた。

そしてPさんは、閉館したはずの博物館の外門を開けた。

「ここでよく、みんなでご飯を食べるの」

そう言って、木々に囲まれた国立博物館のベンチにPさんは腰掛けた。

確かに、ここなら風が涼しくて、気持ちがいい。それに一般の人は、外門をくぐって侵入することができないので、誰も人がいない。

ということで、自然に囲まれたベンチを独り占めにして、食事を楽しむことができるわけだ。

Pさんの友人は2人いて、4人で食事をした。

といっても、その2人は博物館の警備員さんであり、こんなところで一緒に飯を食ってていいのか、僕には分かりかねたが、まぁ、門のすぐ近くなので、不審者が来ればすぐに飛んでいけるみたいなもんだろう。タイでは細かいことは言いっこなしだ。



氷の入った袋を机にたたきつけて、氷がバラバラにされた。

ビールに氷を入れて呑むことが主流のタイでの酒の席は、この氷を割る作業を合図に始まるといってもよく、僕はこの瞬間が大好きだ。

割られた氷をコップに入れると、ビールが注がれ、乾杯。

暑いタイで、ビールをキュッと飲むのは、いつでも至極の喜びだ。木々に囲まれているので、風も心地いい。



酒が入ると、いろいろなことが語られた。

ウボンやタイ全体の歴史や文化、政治、経済などのかたい話や、オカマの観点から語られる飛んだ話など、それはもう雑多だ。

そんななかで僕がPさんについて見て取れたことは、Pさんは、これまで自身の歩んできた経歴と現在の職業に対して、かなり誇りをもっているということだ。

「自分のように、学歴があって、頭を使う仕事についているオカマは、タイ国内では他にいないだろう」と語ったのは、印象的だ。

そんな言葉から垣間見えるのは、タイ社会に存在するオカマ(レズビアンなんかも含まれる)に対する差別や偏見の現実だ。

よく、日本人や欧米人は、タイのオカマというのはタイ社会の中で許容されているので非常に生きやすい、と評価する。実際、日本と比べてみると、そう見える部分も多い。タイのオカマはバンコクであれ、地方であれ、あらゆる場面で見かけることができるし、しかも皆の中に自然に溶け込んでいるようにみえるものだ。

とはいえ、オカマに対する社会的な偏見や抑圧がゼロか、といえばやはり、そんなことはないだろう。

オカマやレズビアンというのは”こういった存在”みたいな、偏見を土台としたレッテルが、タイ社会でも貼られることは確かなのだ。

Pさんもこれまできっと、そんなレッテルを貼られて、偏見や差別、抑圧をこうむってきたのだろう。

だから、自身のもつ高い学歴や職業にはとりわけ誇りを持ち、普通のオカマと自分は違うんだ、という思いを強く持つのだ。

とまぁ、そんなようなことを、ビールを飲みながら感じたしだいだ。



自然をこよなく愛し、ヨガやアロマセラピーなんかにはまっているという、Pさん。

夢はタイ北部の気候のよいところで、自然に囲まれて暮らすことだという。


     <化粧がとれてるから顔は見せられないというPさん>


<参考>
Peter A. Jackson & Gerard Sullivan. ed., Lady Boys,Tom Boys, Rent Boys:Male and Female Homosexualities in Contemporary Thailand., Bangkok:Silkworm,2000




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