「タイ人は本を読まないから電子書籍は意味がない」は本当か?




「どうしてタイにはKindleのような電子書籍がないのだろうか」

学生たちとそんな話になった。


「タイ人は本を読まないですから、意味ないですよ」

学生はそう答えた。


一見、正しい気もしないでもない。

でもそれは、果たして本当だろうか。


たとえば実際に、「タイ人は本を読まない」としよう。

それは、本が嫌いだからだろうか。

僕はそうは思わない。

学生たちを見ていると、スマホやタブレットで、活字をよく読んでいる。

まとまった文章を読む力は未知数だが、少なくとも活字が嫌いだということはなさそうだ。

タイの文化として葬式の時に本を配るというものがあるが、これも本への愛情が見受けられよう。


ではなぜ本を「読まない」か。

もしかしたら、面白い本に出会ってこなかったということも考えられる。

ワクワクしたり、世界の見方が一気に変わってしまうような強烈な読書体験がないと、本の持つ可能性を知らないということはありうる。


ではなぜ、いい読書体験ができなかったのだろうか。

それは読む環境が整っていなかったという問題があるだろう。

タイでは圧倒的に本屋が少ないのだ。

田舎に行ったら、もう本屋は皆無である。


それは、タイの本は紙の質が悪くて作りが甘いことに加えて、湿気も多い気候に関係しているのでは、と僕は思っている。

つまり、本の大量保存が難しいのだ。


このように考えると、もし本当にタイ人が「本を読まない」ならば、それは「本を簡単に読む環境がないことで、素晴らしい読書体験ができなかったから」という面があるのだ。


だとすると、読書環境をまずは解決することが必要である。

その手段として、電子書籍はいいと僕は思う。

電子書籍ならば、質の悪い紙ではないし、湿気による劣化もない。

田舎であっても、簡単に本にアクセスできる。

電子書籍は物理的・環境的な問題をクリアしてくれるのだ。



「タイ人は本を読まないから電子書籍は意味がない」という見方は、一見すると正しい気がしてしまう。

でも、「本を読まない」ことを、タイ人の性格・本質として決めつけるのは寂しい。

タイではただ読書環境が整っていないだけだ。


電子書籍こそ「タイ人は本を読まない」というイメージを書き換える可能性だ!と考えた方がいいのである。




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