トゥクトゥクを飛ばして約5分。約束時間ぎりぎりで、ウボンラーチャパット大学に到着した。
しかし、ウボンラーチャパット大学の中で、セミナーが行われる”スーンワッタナタム(文化センター)”が、これまたどこにあるのか。
焦る心で、通りかかった若者に聞いてみたところ、運よく、目の前にある立派な建物がそうだった。
「これが、ウボンラーチャパット大学・文化センターか。すばらしい外観だ。ほー」と感心する。
と思っていたら、待ち合わせをしていた先生が門の前に。
タイ式の挨拶”ワーイ”をしながら、「遅れてすみません」と言うと、笑顔で「大丈夫、まだ始まっていないよ。先に4Fに行ってて下さい。僕はもう一人の先生をここで待たねばならないから」という至極優しいお答え。
この先生は本当に物腰柔らかく、謙虚だ。年は40歳前後だろうが、ものすごい落ち着きようである。こんな風に年をとりたいものだ、と思う。
※
さて、今回のウボンラーチャパット大学でのセミナー。
そのテーマは、
”ウボンが現在抱える社会問題とは何か?そしてそれをどのように解決すべきかを皆で探る”
というものだ。
セミナー会場には、70人くらいの人びとが集まっていた。そのうち20人くらいは僧侶。日本のセミナーや学会では、ちょっと考えにくい構図である。
そして、これもまた日本では考えにくいことだが、セミナーは仏教儀礼をもって開始された。代表者が、舞台にある仏壇のロウソクに火をつけ、皆で読経をすることから開始されたのである。
さて、午前中は社会問題に関する2つの発表があった。
ウボンラーチャタニー県知事による「仏教的教えに則ってのウボンの人びとの成長」と、トゥンシームアン寺の住職による「仏教的教えによる人びとの成長」である。
<ウボンラーチャタニー県知事>
<トゥンシームアン寺の住職>
両者ともに、現在ウボンやその他の地域が抱える問題は深刻の度合いを深めつつあり、そこでは人間的な成長が不可欠であるという問題意識に基づき、仏教的な教えにしたがって人間的な成長をはかることで社会問題を解決して、ウボンを発展させなければならないと主張していた。
ウボンに現在横たわる問題は、麻薬、少子化、家族あり方の変化、乱暴な若者の増加などさまざまあり、それは、西洋や日本などの先進国が抱える問題と大差がない。世界の各地で直面している共通の社会問題に、タイの一地方の人びとが仏教的教えを基礎とした解決策の模索を提案しているのである。
深刻な社会問題を仏教的な視点から解決策を見出そうとする一地方の動向と結果が、今後の世界の社会問題の解決策に有益なモデルケースとなれば面白いと思う。
だからこそ、仏教的な精神論に終始することなく、解決方法をもっと具体的に提示して欲しかったようにも感じた。具体的な方法をもっとつめれば、議論はもっと有益なものになるだろう。
また、こうしたセミナーは、ビデオに撮影してYouTubeやiTunes Uなんかにアップしたり、インターネットを通じてリアルタイムで諸外国に発信したりすべきだろう。英語に翻訳して、世界中の人びとが共有できるようにしなければならない。せっかく、有意義なセミナーをやっているのに、一地方の70人そこそこだけで議論が終始してては実にもったいないなぁ、と感じたしだいである。
さて、2人の発表が終わり少しの質疑応答が行われたあと、昼食となったのだが、その前に午後のプログラムが発表された。
プログラムは、
①ウボンが抱える社会問題とは何か?
②数ある社会問題の中で何が一番早急に解決すべき問題なのか?
③それを解決するための方法とは何か?
④村や県はそれぞれどういった役割分担をすべきなのか?
⑤誰が一番の主体となって社会問題と向き合うべきなのか?
といったテーマを、①僧侶、②先生、③村の役員クラス、④医者・官僚、の4グループに分けて討論しあうというものであった。
午後1時から5時までみっちりと行なう、という。
僕は③の村の役員クラスによる討論会に参加することを決めて、昼食会場へと向かった。
応援のほど、よろしくお願いいたします
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