「胆喰いの霊?」
「そう。胆を喰う霊。その親戚は80歳を超えたばあさんだったんだけど、ある日を境に、誰とも口をききたがらなくなってな。で、高齢で歯もほとんど抜け落ちているにもかかわらず、生の鶏を喰らうようになった」
「生の・・・」
「言動も不可解。これはおかしい・・・まさか・・・ということで、村のモータム(除霊師)に相談したんだ。そしたら、案の定、ばあさんは胆喰いの霊にとり憑かれていてな。霊祓いの儀礼を行うことになった」
「霊祓いの儀礼ですか?」
「ああ。まず、ばあさんの体に、ワーンという葉っぱをこすりつける。もし、霊がいる部位に葉があたると、ばあさんは『痛い、痛い』と叫ぶんだ。そこで、モータムは聴く。『お前は誰だ?なぜこの体に憑いている?』と。しかし、霊は答えない」
「そこで、今度は木を使って体を叩いていくんだ。そうすると、霊は『痛い、痛い』と叫んで。そして、モータムが『そんなに痛いのならば、この体から出て行け!』と一喝。すると霊は観念したのか『分かった』と言った」
「で、モータムは扉を開けるように人々に促すとともに、扉の前に立たない様に注意した。別の体に霊がのり移っては困るからな。そうして、無事ばあさんの体から霊は出て行って、ばあさんは元気になったんだよ」
「へぇ」
「でも、まぁ、その後、幾年か経て、結局高齢で死んじまったけどな。はっはっは」
そこで笑う意味は分からなかった。
※
イサーンの人に伺った話である。
イサーンやタイ北部の人々は、今でも人にとり憑く悪霊の存在を信じてやまない。
世代は関係ない。
年寄りだろうが若い人だろうが、胆喰いの霊を信じている。
では、実際に肝喰いの霊とはどういったものだろうか。
タイの柳田國男的存在、アヌマーン・ラーチャトンによると、胆喰いの霊に関して、次のような特徴がある。
〇人が誰かを呪うことで、呪われた人間がとり憑かれる。
〇胆喰いの霊は、とり憑いた人間の摂取する食べ物を糧にする。よって、憑かれた人間はガリガリにやせ衰える。最後には、肝をはじめとした内臓すべてが喰われて死んでしまう。
〇憑かれた人間は異常な行動をとるので、すぐに分かる。ひとりでにペラペラとしゃべったりするという。
〇憑かれた人間は、その家族ともに村から追放される。
〇胆喰いの霊が恐れるのは、呪医、除霊師、カミの化身といわれる僧侶。この三者のみが胆喰いの霊を駆逐できる。
また、村人の話では、胆喰いの霊は遺伝する。そのため、家族もろとも村から追い出されるわけだ。
胆食いの霊に憑かれた家族は、人目を避けるように放浪の旅に出る。しかし、なかなか定住先が見つからない。
そして、最後には、胆喰いの霊に憑かれた者たちが集まって住む集落に行き着くらしいのだが、その所在は村人も知らないとか。
まぁ、現在においては、村から追い出すまではいかないらしいが、しかし、霊の存在は深く信じられているし、霊祓いの儀礼も行われている。
そこで、次回は、昨年にとある村で大々的に霊を追い祓う儀礼が行われた模様を放映したTV番組を紹介したい。
というわけで、つづく
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こんにちは。ご無沙汰しています
返信削除(ブログはチェックさせていただいていましたが)。
ピーポープは映画にもなっていますよね、
しかも、かなり長いシリーズで。
自分はまだ観た事がないのですが、聞いた話では、
最初はRyotaさんが書かれているような言い伝えに沿った
ストーリーだったようですが、シリーズ後半はほとんど
幽霊と鬼ごっこになってしまっているという・・・。
でも、こういった言い伝えは興味深いですね。
タイには色々な有名な(?)霊が沢山いるようですし。
霊祓い儀式のTV番組も楽しみにしています。
コメントはしていませんがいつも拝見しています。未知であるタイ郊外の村の様子や建造物など興味深い内容を楽しんでいます。バンコクの下町で生活できるとは・・すごいなぁ~と感心しながら安全を祈ってます。
返信削除霊祓い儀式のTV番組、期待してます。
kapirajaさん。
返信削除コメントありがとうございます。
確かに、ピーポープに関しては映画になっているようですね。
僕も観たことがないのでなんともいえないのですが、ただ、幽霊と鬼ごっこになるというのはなんとなく想像できるような気がしますね。笑
匿名さん。
返信削除コメントありがとうございます。
記事の更新が滞ってますが、今後も、タイの村のことや、街のことを細々と、マニアックに綴っていきます。
どうぞ、よろしくお願いします。
とりあえず、霊祓いのTV映像、投稿しなくては!ですね w