噂のチカラ。

”今月28日(つまりは今日)、プーケットが津波によって水没する”

そんな噂がタイで拡がっている。

11日に発生したスマトラの大きな地震以降、プーケットでは震度2〜4ほどの地震がちょくちょくあるらしく、それを根拠として噂が流れたのだ。



「水没するほどの津波なんかあるわけない」

人びとはそう思いつつも、やはりどこか気になるのだろう。

先日には、環境地質学研究所の所長が「水没なんてあり得ない」とコメントを出したが、それは噂を完全否定しきれない人びとの動揺が存在したことを示唆しているといえよう。





「何かとんでもないことが起こる!」という噂が拡まって、住民がなんらかの行動をとったというケースは、たとえば20世紀初頭、タイ・イサーンやラオスでもあった。

「○○月○○日に大異変が起こる。豚は鬼になって人を食う。○○○寺の砂は金に変わる。これまでの悪き行いを洗い流して急いでタンブン(積徳行)をしないと死んでしまう。…」

なぁんていった噂だ。

これを聞いた住民は寺に行って砂集めに励んだり、各地で発生する自称聖者から儀礼を受けて悪しき行いを洗い流したり、あるいは鬼に変わる前に豚を殺したり、といった行動に走ったという。

人びとは不安と希望の入り交じった感情をもって、”その日”を待ったのである。



しかし、予言された”その日”は特に何事も起こらずに過ぎ去った。

大半の人びとはそこで「やっぱり何もなかったな」なんて感じで日常に戻ったのだが、一部の集団は権力主体への闘争グループへと発展している。

メコン川をはさんでタイ側の人びとはシャム政府と、そしてラオス側の人びとはフランスと衝突したのである。

「我々ラオトゥン(中腹ラオ。低地ラオの人びとから長い間差別的に扱われていた)の独立を認めろ!」とまぁ、噂とは関係のない方向性での主張が展開されて、ラオスにいたっては20年以上もの長い闘争になっていくのだ。(タイ側は2ヶ月ほどで収束)




発端は単なる噂話。

それが不安と希望の感情をつくりだし、人びとは同じような行動をとってつながり、最後、そのうちの一部は自己の権利を求めて権力主体と戦うグループへと発展したのである。

噂話は、歴史的に大きな事件へと発展させるための人的つながりを促すという意味で、大きな力を秘める。噂の内容の真実味云々は二の次なのだ。



そう考えると、今回の噂話の騒動。

もしかしたら、噂話が人びとをつなげ、僕らが予測もつかないような方向にいっちゃったり、って可能性も別にゼロではないのである。

まぁ、とはいえ単なる噂として忘れ去られることが大半でしょうけどね。




ちなみに、先の所長さんによると、噂の背景にはプーケットの土地価格の混乱を招くことで利益を得ようとする投資家の存在がチラついているとか。

それが本当だとしたら、自分の利益のために根も葉もない噂を流して地域住民の不安をあおるなんて、あぁいやだ、いやだ。



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2 件のコメント:

  1. もし本当に一部の投資家の儲けのためにこんな噂を流したの
    だとしたら許せないですね。
    沼の件といい、噂や神聖なものを信じやすいタイの人たちの
    心につけこむなんて腹が立ちます。
    沼もどー見ても衛生的に・・・。
    信じるという気持ちは尊いものですけど、きちんとした情報や
    知識を持っておくのも大事ですよね。

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    1. 本当ですね。金儲けのために流していたとすれば、腹立たしいかぎりです。
      こんな時代、タイだけでなく日本でも、あるいはどこであろうとも、情報リテラシーは非常に大事なことですね。

      削除