タクシン氏、ラオス訪問。氏の巧みな対外政策史と今後の方向性。



タクシン元首相がラオスの古都ルアンパバンへ訪問したらしい。





タクシン氏の法律顧問ノパドン氏によると、この訪問はあくまでも政治的なものではないとか。

しかし、タクシン氏の妹インラク首相は先日内閣改造に踏み切ったところである。

どうもタイミングがよい。



まぁ、こうやって考えてしまうのは、やはりタクシン氏が現役だった頃の氏の対外政策の巧さが頭にちらつくからだろう。



もともとタクシン氏が首相だった頃、氏は国内だけでなく、国外に関しても独自のイニシアティブを発揮した。

たとえば、アジアの経済統合に向けて、日本やアメリカなどとの二国間自由貿易地域協定(FTA)締結交渉を積極的に進めた。

また、国家間同士のつながりを重視し、2002年からのアジア協力対話(Asia Cooperation Dialogue: ACD)や、新たな地域協力枠組みとしてのイラワジ・チャオプラヤー・メコン地域経済協力戦略(Ayeyawady-Chao Phraya -Mekong Economic Cooperation Strategy: ACMECS)を設立したりした。

先進国とのFTA 締結交渉を進めつつ、近隣諸国との地域間協力を強化していったわけである。



こうした氏の積極的な対外アプローチは、チャートチャーイ政権(1986−91)以降のタイの国際経済相互依存の高まりを基礎として発展したものである。

グローバルな経済システムが発展していく世界の中に、タイをどのように位置づけるか。

その答えとして、タクシン氏は先進国の経済力を背景としながら、周辺の発展途上国よりも優位な立場に立つ”中進国”としての国づくりを進めたのである。



その後、クーデターによりタクシン氏は失脚、国外逃亡の身となるわけだが、去年に妹インラック氏が首相となってからは、また積極的な活動を見せ始めている。

様々な国に訪問し、昨年8月には日本にも訪問したことは記憶に新しいはずだ。




実は僕は、氏の日本訪問時における講演会に参加したのだが、そのときカンボジアなどの周辺諸国、あるいは国内に存在するイスラム系などの少数民族らとの軋轢に関する質問があがった。




氏はそれに対してとかく、対話と教育の重要性を唱えた。

相手の立場を考えて対話すること、そのためにはタイ国内での教育をもっとすすめ、少数民族への理解を深めることが大事だとしたのだ。



経済的な面だけでない氏の対外戦略ビジョンが見え隠れしている。

つまり今後は、タイのソフトパワーをどのように近隣諸国に伝えていくべきか、ということだろう。

地域の中で独自のイニシアティブを確立するために、中進国リーダーとしての象徴性を示すべく自国の魅力を周囲に提示していく。

これが今後の鍵であり、今回の氏のラオス訪問も、その方向でみるべきだと思う。





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