ニライカナイ。
なんともいえない響きをもつこの言葉は、沖縄諸島に伝わる民間信仰であり、海の彼方にある異郷をさす。
そこは楽土であり、神の浄土である。
そして、死者の行きつくところでもある。
日本本州でいうところの「常世」か。(常世については折口信夫『民族史観における他界観念・神道宗教化の意義 (折口信夫全集)』)
こんなふうに、水平線の彼方に理想郷や他界を想う。
そんな観念は、オセアニアの神観念とで比較した岡正雄『異人その他―他十二篇 (岩波文庫)』の研究なんかでもみられるように、海辺では普遍的なものものといえそうだ。
で、タイもその例外ではない模様。
今日1月6日、タイ地元新聞Khaosodに、タイ南部パンガー県での舟流しの儀礼を紹介する記事が載っている。
(Source: Khaosod http://bit.ly/wpN2Du)
舟流しの儀礼を実施したのは、パンガー県バーンムアン区のモーケン族。
モーケン族は、アンダマン海やメルギー諸島、タイ、ミャンマーにいる海洋民族のことである。
船流しは、100年以上の歴史を持つ伝統儀礼だという。(儀礼の模様はコチラの動画(2011年のもの))
新年を迎えるにあたって、自身と共同体に一年間で蓄積した悪いことを祓い、安寧を願うため、米や乾燥食、花、線香、爪と髪の切れ端などを船にのせて海に流すのだ。
記事によると、モーケン族は特定の宗教をもたないらしい。
しかし、この舟儀礼によって先祖を祀り、共同体の安寧をはかるという行為は欠かすことがないとか。
海とともに生きる彼らのなかに存在する、普遍的な観念ー地平線の彼方には神や先祖の住む場が存在するーが隠し切れずにじみ出ているようだ。
別に隠しちゃいないだろうが。
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