ラオ社会のケーン(笙)と古代ロマンとの遭遇。



4 コメント


舞台の中央に用意された椅子に腰を下ろしたおっちゃんは、静かにケーンの用意を始めた。



なかなかの緊張感を感じさせる熟年の表情。

これより、天空神ピーファーに病気治癒を祈る儀礼=ラムピーファーが夜を徹して行われるのだ。それは、この道のベテランといえども顔は強ばって当然といえよう。



ところで、さらっと当たり前のように「ケーン」と書いたが、それは何?って話だろう。

今回はラム・ピーファーの儀礼ではなく、おっちゃんの手に持たれたケーンについて記しておきたい。



ケーンとは、ラオの人々に伝わる竹管楽器である。日本でいう笙に近い。

僕は土産用のおもちゃのケーンしか吹いたことがないが、息をすったり吐いたりすることで、音が出る。

ケーンの音色は、力強く、そしてどこか儚い。



ね?



ラオの社会にかかわれば、かならずケーンの音色を耳にするはずだ。

渋きおっちゃんが臨むラム・ピーファーのような精霊儀礼だけでなく、民謡などでも必ず用いられる。

(ロックとラオの歌謡モーラムの融合で大ヒットした人気バンドボディスラムのคิดฮอด(恋しい)でも、むろんケーン奏者は活躍し、その腰が遺憾なく振られていたことは記憶に新しいはずだ。(その映像と歌詞の日本語訳はコチラを参照願いたい))



ところで、ケーンの歴史は深い。

起源としては南中国が有力。そこから東南アジアに紀元前500年頃から広まった銅鼓や青銅器にはケーンを吹く人が描かれているという。


踊る人びとに混じってケーンの奏者。

今の様子と全く同じであり、それは100年ほど前の壁画を見ても同様だ。

.       (マハーサラカーム県パーレーライ寺壁画)



そもそも、儀礼や祭りに音楽は必要不可欠である。

音楽は人間の認知能力よりも、感情に強く訴えかけてくる。言語とは違う。だから極端にいえば、儀礼において言語は必要ない。音楽さえあれば。

その意味で、言語は宗教の諸行為の中で最終的に加わったとか。

ニコラス・ウェイドによると、人類の進化論的にみれば宗教的なものに関わる行為そのものは、①舞踏、②音楽、③儀礼を中心とした原宗教、④言語、⑤超自然的存在への共通の信仰にもとづく宗教、といったプロセスを経たと想定されるという。(『宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰』)



そう考えると、おっちゃんの吹く儀礼の場にいること。それは最も古代の空間に遭遇していることに他ならない。

しかも、おっちゃんが吹くケーンは竹製。竹のもつ本質的な霊性にこだわるならば、そこに神が宿っていると考えてもおかしくはなさそうだ。



一晩中踊り続ける、トランス状態に入ったおばちゃんたち。



その中心で、おっちゃんも一晩中ケーンを吹き続ける。


儀礼の場に立ち現れる妙な雰囲気や高揚感は、神が立ち現れた古代ロマンとの遭遇に他ならない。



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4 コメント:

Phimai at: 2012年1月28日 17:40 さんのコメント...

『ケーン』初めて見ました。独特の音がしますね。
笙などもそうですが音を聞いただけで想像力を掻き立てられる
感じがします。言葉がなくても伝わってくるものがありますね。
そういう意味では・・話は少しそれますが今日パタヤで開催
される(た?)ロックフェスにドラマーの神保彰氏が出演され
ていると思いますが、彼もまさしく音を聞いただけでいろんな
ことを感じさせてくれます。(それ過ぎか・・笑)

Ita@san at: 2012年1月28日 22:29 さんのコメント...

ケーンは、確かにタイを感じさせてくれます。

Ryota Wakasone(若曽根了太) at: 2012年1月29日 9:57 さんのコメント...

phimai さん
”言葉がなくても伝わってくるもの” そうですね。
すごいものに出会うと、むしろ言葉が邪魔になるみたいな感じもします。
神保氏のワンマンオーケストラなんかみても確かにそうですよね。笑
しかし、神保氏がパタヤーでやったとは知りませんでした。

Ryota Wakasone(若曽根了太) at: 2012年1月29日 10:00 さんのコメント...

匿名Iさん。
ケーンを聴くと、「ああ、タイだなぁ。ラオスだなぁ」って。
ほんとそう思います。
(もちろんベトナムやカンボジアなど広くあるんですけどね)

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