思いがけない特別稽古 ードイツ弓道連盟名誉会長ホフ先生、チェンマイ大学へー


バンコクのサイアム弓道会(SKK)による年末28日と29日のセミナー。


丸二日にわたる充実したセミナーの終わりにあたって、SKKとチェンマイ大学弓道部のメンバーがホフ先生を囲んで円座になった。そこで一人一人が、この2日間の感想を述べていった。


全員が一通り思いを述べ、ホフ先生が話を始めた。そして、最後に思いがけない申し出をいただいた。


「……実はチェンマイに行くんです。そして、1月2日と3日はフリーなので、どちらかの日にチェンマイ大学に行って稽古をつけてあげましょうか」


我々はもちろんお願いした。



3日朝、学部の車に乗って先生のホテルまでお迎えにあがった。この前の弓道着姿とはうってかわり、ジーンズにポロシャツときわめてラフ。しかし、やはり弓道や柔道、剣道、合気道などを全て習得した師範。姿勢がとても正しく、どこかただものではない雰囲気を感じさせる。


先生と車の中で色々と話をしつつ、大学のアーチェリー場も案内、日本研究センターに着いた。弓道部の顧問はセンター所長が、副顧問はセンター副所長、会計事務はセンターの専門職員がやっているからだ。


センター前で記念写真😆



センターの中を簡単にご案内。センター図書室には13,000冊以上の日本関係の本が所蔵されていてOPACで検索ができること、センター内の教室では大学院生や学生の授業が行われること、また毎週水曜日には書道や生花、茶道、折り紙、百人一首かるたの文化活動が行われていることなどを説明した。


先生は日本文化に興味を持っておられるので、とても真剣に聞いてくださった。


そのあと、センターの前にある50周年記念ホールへと向かった。ここが今日のホフ先生による特別稽古の会場だった。15名ほどの学生がすでに集まって、先生を待っていた。


先生はスタスタと学生たちの方に向かうと、すぐに3列に並ばせた。


「礼!」


何も話すことなく、唐突に稽古を開始された。




年末にセミナーに参加した学生は「これ、これー」といった嬉しい気持ちだったろうが、初めての学生は驚いたようだ。


副学部長らもまず簡単に挨拶をする予定だったが、それも行われることなく稽古に入った。副学部長は「日本の伝統って感じでいいですね」と言った。


学生は、真剣に先生の英語に耳を傾け、ご指導にしたがった。足踏みや、フォームの方法から弓の扱い方まで、先生から幅広く教えていただいた。



喉から左手の先端までの長さを、矢で測った。この長さが、矢を放つときの構えの歩幅になる。これが一番安定するのだ。学生たちは皆でチェックし合いながら、真面目に応えた。


午前で3時間近く、ランチを挟んで午後にも1時間以上にわたり親身に教えてくださった。学生も頑張って英語で質問を繰り返し、先生はその全てに答えてくださった。




世界各国で稽古をつけている先生。とても丁寧でわかりやすいご指導をいただいた。




贅沢な時間。発足して1ヶ月ほどの学生にとって、なかなかできない貴重な経験になったと思う。




先生をホテルにお送りする車に乗り込むとき、

「先生、本当にありがとうございました」


キャプテンと副キャプテンが日本語で言った。先生も少し日本語がわかり、日本語で返した。

「弓道、がんばってください」

「はいー。先生も、またきてねー」

なぜか、学生はタメ語だったが、先生は喜んでいた。



「学生は素直でいい子が多かったから、今後が楽しみですね」

そうおっしゃってくれた。嬉しかった。


「では先生、またお会いする日を楽しみにしてます。本当にありがとうございました」

そう言って、ホテルでお別れした。まだできたばかりの弓道部。しかし色々なイベントがあって、幸先のいいスタートを切った。



これから毎週、1−2回ペースで練習が行われる。どれほどの学生が地道な練習に耐えられるかわからない。それでも、いつか環境の整ったチェンマイ大学弓道部から、矢の放たれる音が聞こえる日がくること、待ち遠しいものである。


ただその前に顧問として、さらなる道具購入の予算探しに奔走しなければならない。キャプテン・副キャプテンを連れて、援助してくれるスポンサーを探そうかと画策している。

まあ、これからも乗り越える壁はあり大変そうだが、それ以上にワクワクもしている。



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