「リョウタさん。どういうやり方かよくわらからないから、教えてください。
できるだけ早く覚えたいんです。
今後タイ人のスタッフが増えたときに備えて、教えられるようにしないと…」
41歳のタイ人のおっちゃんが僕に熱く語った。
僕はこのごろ、バンコクで日本人が立ち上げたベンチャー企業のお手伝いをさせてもらっている。
そこに新しい社員として入ってきたおっちゃん。
はやく自分なりに仕事を覚えようと必死なのだ。
おっちゃんは仕事場から歩いて数分のところで奥さんと二人暮らしをしている。
子供はまだいない。
おっちゃんは、10年ほど前に地方からバンコクに出てきたという。
「田舎より、バンコクのほうが仕事があるから…
兄弟もバンコクに出てきています。時々会ってご飯を食べるかなぁ…
でも、最近はお互い忙しいからね。仕方ないよ…」
おっちゃんはこれまでバンコクで配送関連の仕事をしてきた。
でも給料があまりよくなかったようで、今回親戚のツテを使って、このベンチャー企業に入ってきたという。
先日おっちゃんの歓迎会が行われた。
「乾杯~。ようこそ○○さん」
照れくさそうにおっちゃんは乾杯した。
クイっと水を飲む。
「あれ?お酒飲むって言ってませんでしたっけ?」
「はい。お酒は飲めます。でも、今は安居中だから。オークパンサー(出安居)までは呑まないんです」
仏教を深く信仰し、実践している。
おっちゃんはニコニコしながら、元気一杯のタイ人スタッフの女の子達の会話を聞いていた。
僕は相変わらず泥酔した。
ある日、僕が会社でのお手伝いを終えて帰ろうとするとき、遠くから自転車をゆっくりとこぐおっちゃんとすれ違った。
「ご飯を買ってきたんです」
「ああ、これから奥さんとご飯ですね」
「はい。それにしても今日は暑かったし疲れました。明日に備えてメシ食べたら早く寝ないと…それではまた明日」
ニッコリしながらそう言って、おっちゃんは家へと向かった。
最近のバンコクをみてると消費社会が進み、街はめまぐるしい勢いで変化していることを感じる。
そんな中で、日本人の立ち上げたベンチャー企業で新しい仕事にたずさわることになったおっちゃん。
その後姿は心なしか、これから始まる生活にワクワクしているように見えた。
おっちゃんは今日も汗だくで、元気に仕事に励んでいる。
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