日本とタイの民主主義、そしてマスコミ。プロバブリカの事例を読んで思ったこと。



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「ツイッターTwitterのもつ”情報”の質を、タイ・バンコクの赤服騒動で思う」(2010年4月28日付)のコメント欄で、yanyoさんが教示してくれた記事の概要と感想を書いておこうと思う。

その記事とは、牧野洋氏による「ピュリツァー賞を初受賞したネットメディア「プロバブリカ」の実力 記事1本に4000万円をかける調査報道に特化したNPO」(2010年4月29日付 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/526)だ。



”プロバブリカ”

ネットメディアとして、新聞記事を配信しているNPO団体だ。

プロバブリカは、「ウォッチドッグ・ジャーナリズム(マスコミによる権力チェック機能)」を基礎として、調査報告を扱う。

一般的に、ネットで配信される新聞記事は、速さが優先されて、品質は二の次になる感があるのが現状。たとえば、災害現場に居合わせた市民ジャーナリストが、ボランティアに近いかたちで被害の現場を実況報告し、その事件の解説や分析に関しては、職業ジャーナリストに任せればいいという考えが根本的にある。(まぁ、僕もツイッターなどのネットメディアの魅力を語ったこの前の記事はこの視点に準じたけど・・・)

しかし、プロバブリカはまったく姿勢を異にし、調査報道を専門とする。

調査報道は多額の金と膨大な時間を要するため、現在、しだいに失われつつあるが、プロバブリカはウォッチドッグ・ジャーナリズムの欠如=民主主義が機能不全に陥る、という点から調査報告を重要視し、取り扱うのである。

しかも、プロバブリカで書かれた記事は、すべて無料で大手新聞社に提供される。あくまでも金もうけではなく、市民社会に決定的な影響を及ぼすニュースを多くの人たちに読んでもらうことを目的としているのだ。

こんなプロバブリカの信念や思想に共鳴し、銀行経営で巨富を築いた慈善事業家ハーバート・サンドラーは、運営費として毎年1000万ドル(約10億円)を寄付。これを資金源として、プロバブリカは調査報道を続け、今年4月にはピュリツァー賞も受賞している(受賞対象作品「メモリアル病院での生死の決断」)

以上のようにプロバブリカを紹介した上で、牧野氏は、こう締めくくる。

「いずれ日本の新聞社も大リストラを強いられるかもしれない。そんなとき、サンドラーのような慈善事業家が登場して、調査報道に特化したNPOを立ち上げてくれるだろうか。寄付税制の整備も遅れている日本では、そう簡単にはいかないだろう。

そもそも、1面トップに設立間もないネットベンチャー配信の署名記事を載せるほどの度量が大新聞になければ、寄付税制の整備を進めたところで大きな変化は望めない。」


確かに、そうだろう。今の日本の大手新聞社がそこまで懐が広いか、といえば疑問である。社会貢献を至上とする団体がうまく機能するための環境は、まだまだ日本では整っていないってことだろう。

それに、ウォッチドッグ・ジャーナリズムの欠如が民主主義をだめにするという考えそのものも、アメリカと比べれば日本は弱いように思う。

というか、牧野氏も言うように、日本のマスコミは権力と一体化してきた感があるしね。

で、牧野氏の記事を読んでいて、先日タイの政治について書かれた「クーデターの政治学―政治の天才の国タイ (中公新書)」を思い出した。


政治の天才の国タイと副題のつけられたこの本では、タイの民主主義や権力のチェック機能についてこんな風に語られている。

基本的にタイの政治体制は、民政から軍政、そして再び民政へ…といった繰り返し。議会民主主義が国民の信頼を失って腐敗した際の受け皿となるのは軍部。で、絶対権力が腐敗する頃にはフワッとまた民主主義に乗り換える、ってわけだ。

つまり、軍政と民政がある意味、二大政党のような役割を果たし、そこにチェック・アンド・バランスが働いて政治的な緊張感が生み出されているのだという。

権力をもつ両者が互いにけん制しあいながら、民主主義の腐敗が防がれているというわけである。


で、ここで日本と比較すると、今の日本には政党政治が腐敗した際の受け皿がない。民主主義の緊張感というものが弱いわけだ。

ということで、日本の民主主義を自省するような体質や緊張感が期待できない日本の政治体制にあって、民主主義の腐敗を防ぐチェック機能としてのマスコミのウォッチドッグ・ジャーナリズムの考え方は今後ますます見直されるべきかもしれない。

しかも、それが”社会貢献”や”社会的意義”といった使命感のみで動いているプロバブリカみたいな団体はもっと増えてしかるべきだろう。

でも、そんな団体が日本の社会に定着するための環境が整うまでには、うーん。やはり、まだまだ時間を要すかもなぁ…

などと思ったしだいです。yanyoさん。コメントありがとうございました。



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