いつものガソリンスタンド。
給油を済まして、エンジンをスタートさせた。
おや?かからない。
あれ?あれ?
焦りまくる。色々なボタンを押してみる。
知らないスイッチもとりあえず押してみたりする。
もしかしたら、アクセルとブレーキを同時に踏みながらスタートを押せば…と試す。
今考えれば、そんなスマホやパソコンの裏技のようなことでかかるはずもないが、そのときは必死だったのだ。
ガソリンの給油を望む後続車たちが、今か今かと、僕の車が出るのを待っている。
バックミラーに映る運転手たち。イライラしているように映るのは気のせいではなかろう。
エアコンもかからないので、汗だくである。
僕は意を決して車から降りた。
「エンジン、どうしてもかからないですー」
半泣きの態で、ガソリンスタンドの店員さんに言った。
サイドを刈り上げつつのロングヘアーのおじさんで、見かけは割と厳つい。
「え?かかりませんか?おーい、ちょっと見てやってくれ」
おじさんは後続車を違う給油場へ移動させつつ、違う人を急いで呼んでくれた。
呼ばれた人もあれこれ試す。
「こりゃ、バッテリーが上がってるな」
つい2分前まで颯爽と走っていたのに。そんなことあるのかと愕然とする。
「どうしましょう」
刈り上げのロングヘアーのおじさんに問いかけた。
「ニュートラルにできるか?とりあえず、駐車場まで押してあげるよ」
おじさんは後ろに回って、車を押してくれた。
「はいー、右にハンドルを切ってー」
見かけの厳つさとは裏腹に、なんとも親切な方だ。
その優しさに、汗だくで感動した。そして、無事駐車。
そう言って、サッと仕事に戻っていったおじさん。
そのヒーロー性に、感動。後ろ姿をただ眺めていた。
さて僕は、以前に修理をお願いしたことのあるB-Quickが来るのを待った。
1時間ちょっと。急な呼び出し。それくらいはかかるだろう。
何度かの確認電話ののち、B-Quickの店員さんがバイクで現れた。
手には小さなバッテリー。
「もしかしてクレーン車みたいので移動」とかになったら大変だな、と少し心配していた僕はいい意味で拍子抜けである。
そしてお兄さんは手際よくバッテリーに線をつなぐと、スタートしてくれと言う。
写真なんか撮ってる場合ではない。
僕は言われたとおりに急いで運転席にむかい、スタートボタンを押す。
すぐにかかった…。
お兄さん到着から、ものの3分。その迅速さに感動である。
「料金はいりません。会員サービスです。
ただ、バッテリーが古くなってきてるようです。近いうちに変えることをおすすめしますよ」
そう言って、定員のお兄さんはバイクで去っていった。
サービスにもまた感動。しばらく佇んだ。
皆さんの助けあって、無事に車がなおった。本当にありがたい。
帰り際、刈り上げロングのおじさんにお礼を言おうと思ったが見当たらなかった。
引き継ぎしたあとだったのか、休憩に入ったのだろうか。
お礼を言えずして現場をあとにしたことが、悔やまれてならない。
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