ワットプーの遺跡に向かう参道を歩いていると、おばちゃん数人が、木陰で座り込んでいた。 どうやら、観光客にサーイシン(聖糸)を施しているようだ。 サーイシン。 イサーンやラオスではすっかりお馴染みの、魂を強化する儀礼。 呪文を唱えながら、手首に紐を巻きつける。 「健康が続くように・・・」 「たくさん幸せになるように・・・」 「安全に日々過ごせるように・・・」 などなど、だ。 僕がタイ東北部イサーンでいつもお世話になっている家から、バンコクに戻る際は、年長者が必ずサーイシンを施してくれる。 「元気でね。私たちのことを忘れずに、必ず村に戻って来るんだよ。・・・」 僕はいつも決まってホロリとなる。 大きな元気をもらう。 「魂を強化する儀礼」とは、よく言ったものである。 さて、ワットプーのサーイシンおばちゃん ...
「アリガトウ!」と少女。連鎖する幸せ。
「写真、どうですか?」 食堂でおばちゃんとの会話を終え、ワットプーに着いたものの、「遺跡はあんな丘を登らねばならないのかぁ」と、少しげんなりしている時、声をかけられた。 最近、遺跡や寺といった観光地でよく見かける、こうしたカメラマン。 名所をバックに写真を撮って、その場で現像してくれる。 遺跡をバックに自分が被写体となるには、自分のカメラのタイマーを駆使して、遺跡の前を右往左往することになるので、その意味ではこのカメラマンに頼むのは楽といえば楽である。 値段も大したことないし、ということで、一枚パシャリ。 「これで、いいかい?」 カメラの液晶画面には、妙に半笑いの、とぼけた顔した僕の姿が、ぬぼーと映し出されていた。 遺跡が壮大で綺麗なだけに、自分が妙に貧相だ。 だが、撮り直したところでどうしようもないので、僕はあっさりとOKを出した。 カメラマンのおっちゃんは、近くにいたおばちゃん(おそらく奥さんだろう)にSDカードを渡した。 おばちゃんはスタスタと、何故か木々のほうへと、現像に向かっていった。 さて、写真を撮り終えたおっちゃんは、一仕事終えたという感じで座り込み、子供と遊びはじめた。 子供は、嬉しそうに、なにやら体に悪そうな色のジュースやら、お菓子を食べている。 子供は、日本人の僕が気になるのか、ちらちら見る。 子供の澄んだ目が印象的だ。 そこで、僕はカメラを向けた。 おっちゃんに、写真に写れてよかったな、みたいなことを言われると、 「アリガトウ!」 子供は、日本語でそう叫んだ。 「日本語しゃべれるの?」 「ここによく来る日本人のとある女性が、教えてくれているんだ」 おっちゃんはそう言って、子供の頭をなでた。 「アリガトウ!」 子供は、連呼する。 そのたびに、僕も、おっちゃんも、周りにいた人々も、微笑ましく子供を眺める。 そんな周りの視線が、子供心に嬉しいのか、何度も何度も子供は叫んだ。 「アリガトウ!」 日本から遠く離れた田舎の地で、ある女性の方が日本語を教えている。 そのおかげで、周りがなんだかホワーンと癒される。 ちょっとしたことかもしれませんが、幸せな気持ちが人から人へ、連鎖していくような気がしましたよ、日本人女性の方~。 (function(d, ...
ラオス人おばちゃんの、タイ政府観・イサーン観。
いろいろとあったがようやく、「ようこそワットプーへ」的な場所に到着した。 パクセーの街からバイクで1時間20分、というところだろうか。 無事に着いた安心感から、とりあえず、ワットプーの前にあった食堂へ入る。 妙にガラーンとしていて不安だったが、これがなかなか美味だった。 「韓国からかい?」 店のおばちゃんが話しかけてきた。 「いや、日本です。どうしてですか?ワットプーには、韓国人が多く来るの?」 「いや、そういうわけじゃないけどね。やはり日本人のほうが多いよ。まぁ、ほとんどが西洋人だけどね。ただ、あなたの顔が韓国人っぽかったから」 そういえば昔、韓国で、韓国人にインタビューされたことを思い出した。 それからおばちゃんは、フラリとあらわれた若い子に肩をもまれながら、いろいろと話をしてくれた。 ワットプ ...
ラオスのブンパウェート。 お婆ちゃんの思い出話。
遠い未来、弥勒の世に生まれかわることを期待して、この祭りは行われる。 ブンパウェート祭。 タイ東北部イサーンでは何度か見たことがあるが、ラオスでは初めて。 とはいえ、見聞の限り、ラオスとイサーンでは大きな差が無かった。 同じラオ人の社会だから、当然といえば当然かもしれない。 寺で僧侶の説法を聴くお婆ちゃんに、話をうかがってみた。 「そうだねぇ・・・ この祭りは、私が子供の頃からあったよ。 ラオスの村人皆が、大切にしている祭りだからねぇ。 祭りに参加すると、とても大きなタンブン(積徳行)になるんだよ。 弥勒様にも会える、というしね。 でもね、思い出すのは、子供の頃の楽しかったことかなぁ。 みんなで寺に一日中いてねぇ・・・ それは、それは楽しかったよ。 祭りの日には、大人たちがたくさん集まってねぇ。 ...