白石一文『僕のなかの壊れていない部分』光文社・2005年
白石氏らしい作品。
おそらく作品に対する評価は、分かれるだろう。
主人公が言った
「・・・・人には、与えられた命をどうにかする権利なんてこれっぽちもないんだから。命を自分の意志や力でどうにかできるなんて考えてしまったら、恋愛なんていう脆弱でかりそめの花は、咲き誇るどころか、たちどころに枯れ果ててしまうに違いないからね。人間一人一人が生命を自分のものだと考えることで生み出される世界では、ただ暴力と差別、支配と隷従だけしか生き残れないと僕は思っている。いま、この世界がまさにそうであるようにね」
という言葉は、まさに白石氏らしさ爆発である。
コレまで僕は、以前このブログでも紹介した『この世の全部を敵に回して』のほかにも『一瞬の光』『すぐそばの彼方』『不自由な心』など数々の白石作品を読んだが、そのすべてにおいて白石氏の世界観や哲学が表現されている。
ま、もちろんそんな世界観や作品の雰囲気については賛否両論あろうけど、僕は氏の深い問題意識とクールなものの見方に共感を覚える。
特に”死”に対するこだわりと深い思考の態度が、いいなぁ。
あと、タイトルのセンス。
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