「嫌だ、嫌だ」
そう言いながらも、人々からうながされれば前に出て、そして、なんだかんだで気持ちよくしゃべる。
僕は、振り返ってみると、中学の頃からそうだった気がする。
まあ、至極控えめな僕は、あくまでも"促されれば"という話である。
バンコクの隣県パトゥムターニー県での教育セミナーにて、「理想の教師」というテーマで講演をしてほしいと頼まれたのは、3月のことだった。
以前、「タイ・ロッブリーのゲーテ」として紹介した先生にである。
「リョウタ。6月に行われるASEANに関する教員セミナーで、日本・タイの教育を比較しながら、理想の教師について話をしてほしいんだ」
「もちろんうれしいですが、ただ、僕は日本で教員の仕事をしたことありませんよ」
「それはそれで構わない。教員はやってないかもしれないが、リョウタはどこで教育を受けた?」
「もちろん日本ですが…」
「そうだろう。ならよく考えて、データを集め、自分なりの答えを出してもらえればいい。当日は、数百人のタイの教員が来る。そこで、1時間半ほど話してくれ」
なんたる光栄。
もちろん快諾した。
「まあ、発表まで3ヶ月くらいあることだし…」みたいな、いつもの悠長な構えも丸出しだった。
で、いつもの通り、日々はあっという間に過ぎる。
相変わらず、追い込まれるまでやらない性格。
ギリギリではじめた準備では、なかなか適切な"メッセージ"がみつからず、大変大変。
前日はほとんど寝ずの準備だった。
とはいえ、きついのは準備までのこと。
発表本番になれば、あとは、自分のその場の雰囲気にあわせての自由なステージだ。
プレゼン時の会場からの反応というのは、何事にも代え難い、快感である。
おそらく芸人というのは、人を笑わせて受けるこの感覚に、病み付きになっているのだろう。
僕は別に芸人じゃないが、会場からの反応にしたがってノってくる。
ステージの上で体が勝手に動き、言葉は自由に口から出てくるようだ。(ま、写真はパソコン見てるけど…)
でも、頭はえらく冴えている。
こうしてあっという間に、1時間半の講演を終える。
「おもしろい発表だった。重要な指摘がいくつもあって、刺激的だった。ありがとう、リョウタ」
タイのゲーテ先生がそう言って、握手をしてくれた。
なんとも嬉しいお言葉。こちらこそ、貴重な経験ができて、楽しかったです。
で、実は今回の発表。
日本の教育に関する具体的な部分は、高校の恩師をイメージして組み立てた。
かつて、何度も何度も訪問した先生の家で、交わした対話。
数年たって、こうしてタイの人々に伝えることになろうとは、思ってなかった。
残念ながらその先生に聴かせる機会は失われたが、まあ、多分どこかから見てたことだろう。
「まだまだ甘いなぁ。若曽根! ぜんぜん分かってねえ。わっはっは」
そんなこと言ってるにちがいない。
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先生達の前で講演てすごいじゃないですかー!さすがにタイ語ペラペラですね。
返信削除私なんか本番に弱いタイプだから日本語でもなかなか発表とかできないですよ(笑)。
今は亡き恩師の方もきっと喜んでらっしゃいますね。
いやいや。とても面白い経験でしたよ〜!
返信削除発表なんてハッタリ、ですから。ははは。
そして、恩師も喜んでいるというか、笑っているでしょうね。
がっはっはと。そういう先生でした。