初のワイクルー。生徒達に少しだけ敬われてみる。
タイには、師に礼を示す国民行事、「ワイクルー」がある。
先日、僕の勤務先の大学でも行われ、僕も一応敬われて(?)みた。
ワイクルーの日の朝、学校に到着すると、ホールの前には生徒たちの長い列。
「そうか。ワイクルーだもんな」
そんな人ごと感満載で横を通り過ぎ、仕事部屋へと向う。
「今日はワイクルーだけど、何時からですか?」
「学校全体のワイクルーは9時からです。でも私は全体のそれには行ったことがないです。学科のしか行きません。学科のはもちろんリョウタさんも出なくてはなりません。でも、学校全体のワイクルーも、よかったらリョウタさん、見に行って来たらどうです?」
上司の先生に言われた。
「うん。見学もありだな。軽く覗いてみるか」と思ったとき気づく。
カメラがない。せっかくの見学にカメラがないのは痛い。
そこで、ジリジリと日差しが強くなりはじめていくなか、学校から歩いて5分ほどのアパートへカメラを取りにいき、また仕事部屋へと戻った。汗だくだ。
「ま、汗がひくまで部屋でゆっくりしてから、あとで軽く見学にでも行こう」
そう思って机に置きっぱなしにしていた携帯に目を向ける。
着信の数々。
はて? そう思い、折り返し電話をかける。
「リョウタ、何やってるんだ。早くしないとワイクルーが始まるぞ。急いで来い」
先生に言われた。
上司の人は出ても出なくても…、的なニュアンスだったので、甘く見ていたがどうやら出席することが当然であり、しかも急いだ方がよさそうだ。
汗だくのまま、走ってホールへ向かう。飛び散る汗。完全なマラソン。
ホールに着くと、先ほどの電話の先生がビシッとスーツを着て待っていた。
「あれ?スーツ?」
「まぁ、ワイクルーだからね」
先生は、くりいむしちゅうの上田氏ばりに答える。
見ると、他の先生たちもビシッと決めている。
僕はスーツどころか、ノータイ。
パンツにいたってはその日おろしたての、スーツパンツ風のカーゴで、少しカジュアルに過ぎる。
とりあえず仕事部屋に戻ればネクタイはあるので、必要かと先生に問う。
「まだ時間があるから、急いで取ってきな」
またまた走ることになった。
もうワイシャツの下の肌着はびちょびちょ、髪の毛も風呂上がりか!みたいな状態だ。
ネクタイをしめながら汗だくで走る日本人を眺めるタイ人生徒たち。
どこか、小馬鹿にされているような、そんな気がした。
ネクタイをしめて、ホールの壇上に上がると、幸いまだ式は始まっていなかった。
しかし、壇上はスポットライトがあたり、汗が止まらない。
生徒はきっと、あの日本人教師はなぜあんなに汗だくなのか?そんなに緊張しているのか?などという疑問を抱くに違いない。
そうこうしていると、式が始まった。生徒達は校歌や読経、先生を敬う歌をうたう。
そして、先生たちに贈り物を送る。
学校長も挨拶をする。
僕はなかなかひかない汗をふきながら、物珍しげにその様子をみていた。
式は厳粛に行われた。
ホールでの学校全体のワイクルーが終わると、次はそれぞれの学科ごとで式が行われた。
学科の生徒全員が先生たちの前にひざまずき、花をくれる。
これがそのときの様子の写真だが、僕の表情が妙に固いのが気になるところだ。
まぁ、それはさておき、花をもらった先生陣はかわりに生徒の手首に紐を巻き付けつつ、声をかける。
僕以外の先生達はありがたいお言葉を生徒にかけていたようだが、僕は「健康にね」というなんとも学業とは無縁な基本的な言葉を全員にかけた。
式は厳かのようでいて、ワイワイ行われた。
でも、生徒から花をもらうというのはなかなか嬉しいもので、よし今後も頑張って教えよう!という気になるから不思議なものである。
式の最後は先生陣が一人づつ挨拶をした。
他の先生方が挨拶したとき、生徒達はワーイ(タイ式の敬意)をしてありがたく拝聴している感があったが、僕の挨拶のときはなぜか拍手。
全然敬っている様子がなく、友達感覚でいるから恐ろしいかぎりだ。
でも、皆さん。ありがと〜ね。
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ワイクルー、タイには良い習慣があるんですねー。
返信削除のび太君的にドタバタな絵ずらを想像してしまいましたが(笑)
とても生徒さんに慕われてる感じでいいじゃないですか~。
これからタイを支えて行く人達、健康で元気なのが一番!!
いやぁ。それが、全然慕われてないんですよ〜。これから慕われるように頑張ります!
返信削除そして、生徒は健康第一!はごもっともですね。でも、勉強もしてもらわないと困りますが。w