イサーンの村。
田んぼには何かと危険が存在していることは、前回とりあげた牛との大格闘を見てもお分かりいただけたはずだ。
でも村のあらゆる所は、子供たちにとって格好の遊び場でもある。
夕方になると、学校から帰った子供たちがどこからともなく、僕がお世話になっている家に集まってくる。
「ね〜、田んぼに行こうよ」
誘われるがままに僕は田んぼに出る。
薄暗くなってきた道を、先行く子供たち。
ワイワイ・ガヤガヤ。そして爆笑。
なにもかもが楽しいお年頃だ。
「これで虫をとるんだよ。それで虫は売れるんだよ」
一人の子が説明してくれた。
なるほど。
光に虫が集まってきて、下に設置された水たまりに落ちるというシステムのようだ。
虫は食用だろう。以前、食卓に並んだ虫ドンブリに目を見張ったことがある。
薄暗くなってきていたので、だいぶ虫が集まり始めている。
虫が大の苦手な僕は、すぐにその場から離れるよう子供たちに促した。
「あれ?リョウタ兄ちゃん。もしかして虫が怖いの〜?キャッキャッ・・・」
子供たちが茶化し始めた。
「ほら、リョウタ兄ちゃん。あげる」
見るとなんだかわけの分からない虫を握っている。
「わー!!!」
年甲斐も無く叫んで後ずさる僕。
笑う子たち。
非常に悔しいが、苦手なものは苦手だ。
そんな感じでしばらく歩いていると、右手に村の祠が見えてきた。
ピー(精霊)が宿っていると固く信じられている村の祠。
それは大の大人も畏怖する存在。子供たちが怖がらないはずがない。
案の定、子供たちは妙に静かになり、落ち着かない様子だ。
”よし、ここはイッチョ”
そう思い、僕は突然もと来た道をダッシュしてみた。
30をとうに過ぎた中年日本人男性のイサーンでのダッシュ。
そりゃあもう、ハーハーである。
「ワー。待って〜」
僕の後についてくる子供たちは必死。
ついでに、ビーサンで走る足がもつれそうになるのをおさえるのにこっちも必死。
虫を使って中年を怖がらせたお返しを試みたにしては、こっちにとってもあまりに過酷だった。
でも強がって言ってみる。
「どうしたの〜怖いの〜?」
大人げない中年とイサーンの子たちは田んぼで大騒ぎだ。
家に戻ったら、すっかりご飯の支度が整っていた。
「どこほっつき歩いてたの!?ほら、ご飯だから、シャワー浴びといで!」
子供たちが親から小言を言われている。
夕食前の光景はどこの国も変わらない。
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