「テー・プラガートウィティサーンのこと知りたいんだけど・・・」
タイの友人に電話した。
「誰だそれ?」
「去年、俺がYouTubeにアップした1942年のバンコクの洪水映像、覚えている?」
「ああ、あったな。そんなの。なんかご陽気な雰囲気のアレだろ?」
「そうそう。タイ人はこんな時も悲壮感が無くていいな、なんて話して。お前が爆笑してたアレだよ」
「ハッハッハ・・・」
相変わらず笑っている。
「あの映像を撮ったのがそのテーという人で。どうも、”タイ王国・国家芸術家”にも認定されてるというから、有名なのかなと思ってさ。それでお前に聞いてみようと」
「うーん。テー・プラガートウィティサーンねぇ。チューレン(あだ名)は?」
そんなもん知るはずがない。
「どんなことやったんだ?」
「彼は1918年にラーチャブリー県に生まれ、工芸学校に学び写真家へ。で、従軍カメラマンとして政府に仕えていた時期もあったらしい」
ウィキペディアにのっていた情報を伝える。
「ほうほう」
「で、新聞のカメラマンになったり、いろいろな映画制作にも携わってみたりと。映画としては、สุภาพบุรุษเสือไทย、 เสือดำ、 เสือใบ、 เสือมเหศวร、 สาวเครือฟ้า、 ปาหนัน、 เห่าดงなんてのがあったようだ」
「おい、おい。古い映画だな。知らないわ。
ちょっと待てよ・・・・」
PCで調べているようだ。
このへんのフットワークの軽さが、彼の魅力である。
「ああリョウタ、เห่าดงのCMがYou Tubeにアップされているぞ」
早速、指定されたURLを開いてみる。
「な、なんだ、こりゃ?」
เห่าดง(ハオドン)は「密林のコブラ」って意味だが、うーん。
なんだ、この宣伝は。
映像の随所に挟み込まれるコブラ画像。本物もあれば複製、漫画タッチもある。
そして、女性のコンクール模様や、変なおっさんのドアップ写真。
なぜか犬の吠えた画像があったり。
で、ラストはコブラの酒って。
なんとも風変わりなCM。
しかも曲がまた不明だ。
「おい、おい。なんだよ。これ。笑」
「ハッハッハ。タイ人の俺でもちょっと意味が分からない作りだな。ハッハッハ・・・」
「女性がコブラの絵が書かれた服をまとって拳銃を構えてるけど、あれが悪党を倒すときに着る制服みたいなもんなのか?」
「そうだな。日本のウルトラマンみたいなもんだろ」
タイ人の間でもウルトラマンは知られている。
その後、ああだこうだと、二人でおしゃべり。
「いやぁ、笑った笑った。じゃあ、そろそろ切るな」
「ああ、ありがとうな。じゃあ、また」
電話を切り、再度、ボーとCMを見つめる。
「あれ?なんのために電話したんだっけ?」
彼はフットワークが軽くて魅力的。
だが、話がいろいろなところに展開し、変なところに着地してしまうフシがある。
それも彼の魅力の一つといってしまえば、それまでである。
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