ロッブリーの学生のことである。
彼は、このブログにもよく登場していた。
今年、4年生になったばかりの男だ。
彼が3年生のときは、郷土研究という授業を通じて、いろいろなところに行った。
酒もよく飲んだ。
ソンクラーンの時、びちょびちょになりながら、チェンマイに行く可能性があることを初めて打ち明けた学生も、彼だった。
「そりゃあ寂しいけど…でも俺は、だれがなんと言おうと、先生の思った通りしたほうがいいと思います」
そう、言ってくれた。
5月のロッブリー勤務最終日、2年生たちと食事にいった後も、夜中に
「先生、飲みに行こう」
と誘ってきてくれた。
7月にはサラブリーに旅行に行った。
みんなでプールにつかって遊んでいて、夜、ふと2人っきりになったとき
「先生は3年間俺のことみてきて、俺はどんな仕事が向いていると思います?」
と聞いてきた。
彼にとってためになる答えだったかどうかは知らないが、僕なりの考えを言った。
彼は、真面目に聞いてくれた。
「まあ、いずれにしても、若いし、楽しみだな。いろいろやれるよ」
僕は最後にそう言うと、彼は大きく頷いて、くいっと酒を飲んだ。
まさか、それが彼との最後の酒になるなんて思いもしなかった。
先週、ふと彼を思い出してメッセージを送った。
すぐに返信をしてきて、柄にもなく可愛らしい絵文字を使いつつ、「嬉しい」と彼は書いてきた。
そして、日本語がだいぶうまくなってきたこと、交流会で来た日本の大学の女の子たちがかわいかったこと、僕のチェンマイでの仕事のことを聞いてきた。
「かわいいのはいいけど、手出すんじゃねえぞ。笑」
僕がそう返信すると、
「オゲ」
と返してきた。
男同士の、他愛もない会話だった。
それから数日後の突然の訃報。
1人家で、バイクを修理していて、漏電したらしい。
日曜日の深夜に訃報を聞いてから、数日。
今もまだ信じられない。
悪い夢のよう。
明日、ロッブリーへあいつに会いにいく。
実は嘘なんです、とかなってほしい。
朝、大学にいくのに、自転車がパンクして歩いていると、なぜかいつもドンピシャのタイミングで彼が現れ、バイクに乗せてくれたこと。
大学からの帰り道、彼がバイトをしていたコーヒー屋の前を通ると、2メートル近い体にエプロンをして、僕に向かって大きく手をふっていたこと。
・・・思い出すことが多すぎる。
どうしても涙がでる。
ロッブリー勤務最後の日の酒の席、彼は金を財布からとり出した。
「いつも先生に出してもらってるから、先生が最後の日くらいは俺がおごろうと思っていたんです」
「学生からおごってもらう先生なんていねえだろ。大学を無事に卒業して働いてからおごれよ」
そう言った僕に、彼は「はい」と答えた。
でも、あいつにおごってもらう機会はもうない。
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