憑依の評判が立つことの恐ろしさと、共同体の闇。



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前回の続きである。ここで、共同体の闇の部分や人間の本質的な恐ろしさが明らかになる。


儀礼3日目。




まだ、どうやら6匹のピーポープ=胆喰いの霊がいるとのこと。

ということで、ヨーイどん!で棒をもった男が村の徘徊を始める。


相変わらず男たちはトランス状態で、道端でばたりなんて光景も見られる。

そして僧侶は相変わらずの脚力をみせつけている。


儀礼初日から続く光景がまた繰り広げられ、ちょっと中だるみ的な3日目が終わった。

胆喰いの霊は、全8匹のうち6匹、捕獲されたとのこと。残り2匹!だ。



儀礼4日目。(2:20)

人形はある家へと男を導いた。

そこは、村の祠での儀礼を司るヂャムと言われる者の家だ。(ヂャムは村の草分けの人間が世襲しているケースが多い。毎年祠での儀礼だけでなく、かつては村の決まりごと、たとえば村長を決めるなどにおいてもこのヂャムが祠に伺いをたてていた:赤木攻『復刻版 タイの政治文化―剛と柔』)

変なおやじが、妙に胡散臭い表情をして、家の中を徘徊する。(3:07)

そこで発見されるシープンといわれる呪術の道具。(3:35)これを唇に塗ると、希望することが成就するといわれている。

そしてついに、胡散臭い表情のおやじは2人の前で止まった。

胡散臭げに棒を振り回す。(3:43)

この2人が肝喰いの霊に憑かれている、としたのだ。(4:00)


指摘されたほうは、悲惨である。村人から胆喰いの霊として扱われてしまうのだ。

そこで女性の主人は、必死に弁解する。

女性は精神の病を患っていて、3年以上通院している。胆喰いの霊がとり憑いているわけではない。我々の家が商売繁盛していることに対しての嫉妬心から、胆喰いの霊に憑かれているとでっち上げられている、と。

しかし、村人そんな言葉を信じようとはしない。

胡散臭い表情の男は、家の前で胡散臭げに棒をぐるぐる振り回し、最後は胡散臭げに道端に倒れこんだ。(5:15)

ということで、2人は儀礼を受けることで、2人の中に巣食う胆喰いの霊が祓われることになったのである。(5:50)



広場に、捕獲された霊を入れた壷、つまり卵が詰まった壷が置かれた。

そして、肝喰いの霊にとり憑かれた女性に糸が巻きつけらて、卵を焼く場とつなげられる。

おびえる女性。


僧侶は呪文を唱え、その後に糸を切り、女性と卵焼きの場を離した。

これにより、女性の中にいた肝喰いの霊は、卵を焼く場に閉じ込められたのだ。


点火される卵を焼く場。(0:45)大きく燃える炎は、村に巣食う霊のすべてを焼き祓ったのだった。



村人は語る。

”もうサバーイ(心地いい)だ。眠りも快適で、うれしい。”(1:02)


僧侶は語る。

”肝喰いの霊は、誰にでもとり憑く。人々の弱き心に入りこむのだ。”


このように、皆が霊の存在を信じているわけだが、当の憑かれたと確定された女性は語る。

”別に霊にとり憑かれていたわけではない。でも儀礼に応じたのは、それで村人が安心するならば、という思いだけ”と。

彼女は村人からのでっち上げに屈するしかなかったわけだ。そしてこの先ずっと、肝喰いの霊に憑かれた女性として村人から見られ、ひっそりと生きていくことが強いられるのである。



このように肝喰いの霊を払う儀礼はイサーンの各地で見られるが(3:50)、その度に、肝喰いの霊に憑かれている人間が取り上げられて、儀礼の”犠牲”になっている。

たとえば、4:30に出てくる女性。この女性は、肝喰いの霊としてでっち上げられ村から追い出された人の孫にあたる。彼女は語る。

”村で不審な死が発生したときに、肝喰いの霊のせいで死人がでたと評判が立った。しかも、その霊とは祖母ではないかと誰かが言い出した。そして皆がそれを信じてしまった。そのため、祖母は村にいることができず、遠い地へ越した。一度言われてしまったら、皆がそれを信じるので、言われたほうがそれを覆すことはできない”



村の平穏のために、村から排除されて犠牲になった人間は数知れない。こんなケースは太古の昔からあったことだろう。共同体のもつ闇の部分である。

タイでは、近代化がすすむ現状を憂い、過去の共同体を美化する議論がある。しかし、一見、平和で美しく穏やかな共同体の裏には、それを守るための犠牲者や暗い歴史があることも事実である。村から排除された犠牲者があってこそ、共同体の秩序は保たれてきたのだ。


ピーポープ=胆喰いの霊。村人はその霊の恐ろしさを語る。

でも、結局のところ、霊なんかより、人間の心そのもののほうがよっぽど怖え、って話である。


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