オカマな学芸員Pさんの親切性

学芸員のオカマPさんと会ったのは、まったくもって偶然だった。



ウボンラーチャパット大学での社会問題に関するセミナーが終わったあと、僕はトゥンシームアン公園内にあるウボン国立博物館に行ってみた。

博物館の門をくぐると、来客者はいないようで、静かなものだった。

静まり返った館内に入ってみると、入場券を売っているおばちゃんが、ポツンと座っている。

そこで、おばちゃんに、何時までやっているのかを尋ねたところ、閉館まであと30分もないという。

しかも、入館料は決して安くもなく(100バーツ。タイ人は20バーツ!)、30分で見るにはもったいない感があったので、セコイようだが、とりあえず今日のところは、入り口で売られていた本だけを買って帰り、明日以降にもう一度見に来ることにした。

ということで、本の吟味を開始する。

本は透明のラック内にあって、自由に手に取ることができなかったので、いちいちおばちゃんに本をとってもらった。

入り口のおばちゃんは、さも面倒くさそうに、僕が言う本を出した。僕は多少申し訳ない気持ちを抱きつつも、ま、お構い無しに本を要求した。

「何々に関する本はあるか?」「何々ならどうだ?」などと、とにかく質問して本を探してもらおうとした。

しかし、おばちゃんは心底面倒くさい思いを、まったく隠す様子がない。

もう少しで閉館なのになんだこの日本人は、という態度を露骨に表し、

「全然ないね」

と答えた。

そうした状況を受けて、僕はあえていろいろな本を要求してみた。こうなると、ある意味、おばちゃんとの戦いであり、気分は三谷幸喜さんの意地悪なファミレス店員とのやりとりのシーンだ(『オンリーミー』)。

と、その時、博物館内にいたオカマが「何に興味があるの?」と、僕に声をかけてきた。

僕は、簡単に自分の興味を話すと、その人は、「それなら、ちょっと待っててくれ」と言って、博物館の奥へと消えていった。

おばちゃんは、あいかわらずボーっとして、閉館時間を待っている感じだ。

しばらくすると、大量の本を抱えて、このオカマは戻ってきた。読んだ事がある本もあれば、見たこともない本もある。おばちゃんは、あれほどに無いと言い張っていたのに、この人はちゃんと本を探し出してきてくれたのだ。しかも、一生懸命に僕の興味関心に合う頁を探してくれた。

彼女(?)はPさんといった。

僕も自分の名を告げると、Pさんは、

「Mr.リョウタは、明日暇?私が働いている公文書館に行けば、資・史料がもっと沢山ある。朝9時くらいに来るならば、それまでに資・史料を出しておくよ」

と言ってくれた。

ただ、正直、初対面の僕に何ゆえここまで親切なのか、申し訳ないがちょっと警戒してしまったので、半笑いで流しながら、返答しかねていた。

と、ちょうどそのとき、30~40人くらいのタイ人の団体が、ウボン国立博物館に入ってきた。

するとPさんは、

「ちょっと待ってて。私はこの団体客を案内しなくてはならないの。あ、よかったらリョウタも一緒についてまわって、博物館内を見て行って」

と言う。

そこで僕は未払いの入場料を払おうとしたが、Pさんは

「そんなのいいから、いいから」

と。

僕はお言葉に甘えて、Pさんの後について博物館を見てまわった。博物館は、プロの案内があったほうが良いに決まっている。

Pさんは、各時代ごとに展示されている石仏や歴史的遺物、文化の問題などについて、スピーカーを使用して説明して廻った。

その説明は、オカマ的な言い回しのユーモア性も加わって、非常に面白かったし、分かりやすくもあった。

団体客にも好評のようだ。


      <ウボン国立博物館に来た団体客>


明日、公文書館へ行ってみようかな、と思った。

(続く)



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1 件のコメント:

  1. NRCTに研究申請しましたが、ウボンの公文書館の一部の資料を公開してもらえません。ちょっと、その学芸員さんを紹介してもらえませんか。

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